出版社内容情報
類人猿が木から降りて狩を始めたとき人類になった--人間を生まれながらの殺戮者とみるこの仮説はいかにして発生し広く信じられるようになったか?原始古代から現代にいたる生活と狩猟と文化の関係を詳細に検討して,人間とは何かを鋭く問い返す。
南アフリカのアウストラロピテクス出土場所からは何千もの狩猟獣の骨が出ているが、石器の数ははるかに少ない。わずかに発見された石器は洞窟の最上部の地層から出ており、恐らく彼らより進化した人間の祖先によって作られたものであろう。アウストラロピテクス自身が石を少しでも削ったという確かな証拠は何もない。では、どうやって彼らはこれらの動物を殺し、解体することができたのだろうか?ダートは、骨が使われたと考え、半類人猿的人間が獲物の骨を殺したり、解体したりするのに利用したことを示す資料や統計を提示した。ハイエナの顎骨は肉切りナイフとして使われ、野性イノシシの顎は闘いの斧、アンテローブの角は剣、シマウマの大腿骨は棍棒としてなどなど。
考古学者はだれもダートの骨角器説を真面目に取り合わなかったし、当時の科学者は(今日と同じように)、アウストラロピテクスは「主に植物性の食べ物」を食べていただろうと考えていた。しかしわれわれの遠い祖先がキラー・エイプ(殺戮する類人猿)であったという見方は彼の仲間からは擁護された。1950年代初期から1970年代の中頃まで、主要な人類進化の専門家のあいだでは、アウストラロピテクスはハンターであってわれわれの祖先が人間になったのは主に狩猟を始めたからであるということに意見が一致していた。(「1章 キラーエイプ」より)
・「科学」96.6月 書評
・「“動物を狩る”ことの「罪」と「罰」」(産経新聞 96.1.30 福島章氏評 )
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【関連書籍】
『 進化心理学入門 』 カートライト著 (定価1890円 2005)
『 心の発生と進化 』 D・プレマック、A・プレマック著 (定価4410円 2005)
『 人間はどこまでチンパンジーか 』 J・ダイアモンド著 (定価5040円 1993)
内容説明
武器をとって狩りを始めたとき、類人猿は人類となった―この狩猟仮説はいかにして生まれ、広く信じられてきたか。本書は古代から現代に至る狩猟と生活と文化の関係を詳細に検討し、人間と動物、人間と自然のあり方の再考を迫る。
目次
1章 キラー・エイプ
2章 肉の芳香と邪悪
3章 処女の狩人と血だらけのご馳走
4章 白い雄鹿
5章 忍び泣く鹿
6章 機械の壊れる音
7章 エオヒップスの哀しみ
8章 病める動物
9章 バンビ・シンドローム
10章 死に至る自然の病い
11章 獣の魂
12章 暁の死によせて