出版社内容情報
肥大した自己イメージにのめりこみ,いきいきとした感情を凍りつかせてしまうナルシシズム。権力や利潤のために自然環境をも犠牲にする狂気じみた競争社会=文化の病理を抉り,硬直した身体をほぐす作業を通じて本当の自己と人間性回復の途を示す。
ナルシシストとそれ以外の人間を区別するものは、人間味の欠如であろう。彼らは核による人類絶滅の危機に脅かされている世界の悲劇を感じないばかりでなく、自分をのことをかまってくれない世界にたいして自分が値打ちのある存在であることを何とか証明しようとすることに人生が費やされることの悲劇も感じていない。自分がすぐれた人間、特別な人間であるというナルシシスティックなファサードが崩壊し、喪失と悲しみの感覚がいやおうなく意識されざるをえなくなるときには、しばしばもう手遅れである。(「序論」)
・日本経済新聞 93.5.16 別府浩一郎氏評
内容説明
競争社会のなかで成功を収めてきたのは、身体の硬直した人間、感情を失ったナルシシスト達ではないのか?「あまりに多く、あまりに速く」を追求し続ける我々の時代の狂気を鋭く抉る問題作。
目次
第1章 ナルシシズムのスペクトル
第2章 イメージの役割
第3章 感情の否定
第4章 権力とコントロール
第5章 誘惑と操縦
第6章 戦慄―非現実の顔
第7章 狂気への恐れ
第8章 あまりに多く、あまりに速く
第9章 われわれの時代の狂気
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hikarunoir
3
訳者も門外漢と注記するも、昔の本なので用語が現代に即せず、置き換え読み進め時間を費やす。概して自己愛性パーソナリティ障害の背後に毒親を暗示。2021/06/01
いまにえる
1
ナルシシズムとは真の自己が求める価値を見失い、他者にどう思われるかを重視すると筆者は言う。また、ナルシシストとは感情を押し殺した機械あるいは人形のようなものである。筆者はセラピストで論文というよりエッセイに近く科学的根拠に乏しい印象に基づく記述が多い気もしたが、一方で実感を持って捉えられるものでもあった。社会の歯車として働く平日の労働とは真逆の、笑いや泣くという感情表出のカタルシスとしてエンタメ産業の担う役割は大きいように思う。もっとも筆者は、酒やギャンブルは逃避的な快楽をもたらすだけで真の快楽ではないと2017/08/01