内容説明
オーストラリアの大都市シドニーの超高層マンションに母親と住むアビゲール・カークは、感受性が強く、個性的な十四歳の少女。若い女性との不倫で家を出た父親をうらんでいる。アビゲールと友だちのナタリーにしか見えない変な〈ぼうず頭の女の子〉が、こどもたちがやっている〈ビーティー・ボウごっこ〉をじっと見ていた。話しかけようとすると、女の子は走りだして、裏通りに姿を消す。思わずあとを追うアピゲール。そこはロックス地区のはずなのに、いつもと様子が違う。いったい何が起こったんだろう。アビゲールに分かったことは、その変な女の子の名前はビーティー・ボウ。その家族が、なぜかアビゲールをひきとめて家に帰さず、十九世紀の昔につれこんだ。それは、ビクトリア朝時代の生活の貴重な体験、そして男の子ジューダとの恋…。オーストラリアの「年間子どもの本賞」受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
4
アンティーク屋を経営する母と一緒に住んでいるのは超高層マンションの最高級の部屋。最先端の暮らしを送っていたアビゲールが19世紀末にタイムスリップ。彼女を過去に導いたのは頭を丸狩りにした奇妙な少女ビーティ・ボウ。その一家には代々ギフトと呼ばれる不思議な能力が伝わり、どうやらアビゲールはストレンジャーとしてそれに深く関わっているらしい。ストーリーはオカルトじみた設定で展開。ビクトリア時代のシドニーの町の様子が丹念に書き込まれる。病気や災害がはびこり女の子は満足な教育が受けられなかったりするけれど人々は心優しい2006/07/19
綿
2
タイムスリップ冒険譚、もうずっと好きなので…と思いつつ、ゆきてかえりし物語の「ゆきて」にたどり着くまでのパートが割と長く、しかしそこでの親子の人間模様もとてもよかった。いま読んでもいいけど小中学生くらいに読んだらもっと夢中になっていただろう。かぎ針編みのつけ襟がキーになるのもたまらない。「ほんとうに愛しているなら、その人なしに生きていく方法を見つけるものだよ。たとえその人が死んでもね」2024/10/29
timeturner
2
現代の少女がヴィクトリア朝のシドニーにまぎれこむタイム・スリップ物。のんきなタイムファンタジーというよりはリアルな歴史小説に近い。でも、時代を超えた恋を知ることで少女が人間的に成長していく過程はとても説得力があり、ぐいぐい読まされる。2013/10/28
めぐみこ
1
タイムスリップした時代の出来事にどきどきわくわく。はじめは嫌な子だったアビゲイルの成長が清々しい(我が侭時代もそれなりに共感できた私って…)。 最後、「一人は早死に、一人は子なし」の意味がわかったとき泣きました。彼でも彼女でもなく、あの二人が予言されていたなんて。
cica*
0
初めて読んだのは中学生の頃。現代のシドニーに暮らすアビゲイルは、奇妙な少女を追って裏通りを行くうちに19世紀にタイムスリップしてしまう。不思議な力を持つ家族との生活と、切ない恋を通してアビゲイルは成長していく。かたくなで可愛げのなかったアビゲイルが最後魅力的な笑みを浮かべるシーンで、胸がいっぱいになった。過去へのタイムスリップものは現代に戻ってから“あそこで過ごした日々”の痕跡(新聞記事とか)が出てくるのが、おぉ〜と思う反面、切ない。2011/12/10