内容説明
「ねがはくは花のしたにて春しなんそのきさらぎのもち月のころ」の歌をそのままに大往生した西行は花と月を愛し、仏道信仰に生きた風流僧として多くの人々に愛され、偶像化されている。本書は、その西行像に疑問を感じ、西行の作品や同時代の資料を縦横に使って、生身の人間西行を描き出した意欲作。
目次
誕生
父系と父
母方の祖父と母
子女
延臣時代
出家前の義清
出家
出家直後の彷徨
僧房での詠歌
初度陸奥の旅〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chisarunn
8
「西行と清盛」を読んだときに「西行はワセダ中退のユーチューバー」と暴言を吐いたので反省すべく久保田先生の西行論を読むことにした。本歌取りやなんかでめっきり複雑な定家や後鳥羽院よりも、すっきりとわかりやすい歌の多い西行。季節を取り上げるにしろ感情を歌うにしろ共感しやすい。が、やっぱり和歌以外への執着の薄さや、あまりに若い年齢での出家など、自分しか見えていないアーチストの姿を彷彿とさせる。結果を出したからそれでいいのか?仏の道は手段ではないのか?残された歌の中にはそれを思わせるものはないので謎である。2022/06/08