内容説明
作り手としては「子供向け」というポーズを採ってはいるけれど、面白いから、大人もこっそり観たり読んだりしている。この姿勢は、平安時代の古典作品も同じだった。難しいもの・高尚なものとして、つい敬遠されがちな古典だが、セーラームーンにおける竹取物語、サクラ大戦における歌舞伎など、古典的要素はアニメやマンガにふんだんに用いられ、作品を魅力的に彩っている。世界に誇る文化となった日本アニメーションの中で生き続け、これからも受け継がれていくであろう日本古典文学・文化の要素とは。
目次
1 現代によみがえる竹取物語―「美少女戦士セーラームーン」
2 現代における「異界」―「千と千尋の神隠し」
3 「引用」の技法―「機動戦艦ナデシコ」
4 決めポーズと歌舞伎との関係―「サクラ大戦」
5 受け継がれていく古典―「プリキュア」シリーズ
著者等紹介
山田利博[ヤマダトシヒロ]
1959年1月26日神奈川県川崎市に生まれる。1982年3月早稲田大学第一文学部日本文学専攻卒業。1989年3月早稲田大学大学院日本文学専攻博士課程満期退学。専攻/学位:源氏物語を中心とする平安朝散文/博士(文学)。現職:宮崎大学教育文化学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しげ
11
「アニメに詳しい古典文学研究者」が書いたというより「古典文学に詳しいアニヲタ」が書いたみたいな内容だと思ったり思わなかったり…。すらすら読み進めていけますが、内容にはやや物足りなさを感じました。歌舞伎好きとしては、日本のアニメでヒーローやヒロインが見せる「お約束の決めポーズ」は歌舞伎の見得を継承している、という指摘がなんとなく嬉しかったです。2013/09/25
GEO(ジオ)
6
セーラームーンに宮崎アニメ、機動戦艦ナデシコにサクラ大戦、果てはプリキュアまでを扱いながら、現代日本のアニメ作品を中心に残る古典の姿を読み解いていく。現代日本のアニメは少なくとも表向きは「子供向け」の作品として作られている。これは実は古典文学ももともとは同じで、そのため、実はアニメは現代文学以上に古典文学が持っていた要素を数多く残していると著者は説く。また、本書は著者が以前に学術論文として発表したものをよりわかりやすくまとめなおしたもので、著者の過去の論文と合わせて読むと、著者の考えがより深く理解できる。2015/11/11
霹靂火 雷公
3
気になっていたので読了。後半はアニメオタクが「どやぁ!」とばかりに列記して終わりなので、物足りなくはある。アニメで切り離さず、特撮やゲーム、ラノベに児童書など、「子供向け」を謳っている現代の「文学」を包括的に眺めた論考が読みたいところ。2015/11/22
NICK
3
短い本ではあるが、『千と千尋の神隠し』を異界越境ものとして古典と照合したり『サクラ大戦』の帝国華激団のレヴューが巫女の神楽がモチーフと考察するくだりは、なるほど、と思った。こうした古典の影響はよくよく考えてみれば思い付くものであるが、自分は言われなければ気付けないタイプなので、読んで無駄ではなかった。古典からアニメへ、逆にアニメから古典へコミットする入門に手頃な本。2010/11/29
西神中央林間田園都市
2
学校で古典を習うのにはどんな意味があるかって? 勿論、サブカルチャーを理解するために決まっているじゃあないかぁ。もともと古典の物語とか当時のサブカルの範疇に含まれるのが多いからかもだけどね。 記紀や竹取物語、陰陽五行説の時代から既に1000年以上経ているんだけども、日本人の「血」=精神性はそう簡単には変わらないってことだね。ま、その程度で変わるやつなんて精神性じゃねぇよなぁ!? 一つ考えたことは、ポプテピピックは文学の引用手法の結晶で、あんなクソアニメ(褒め言葉)にも古典は生きてたってことです、はい。2019/01/21