内容説明
言葉少なな深窓の姫君たち。だが、源氏物語がふとした合間に描く“ふるまい”にその思いはこめられている。冷談だと思われがちな葵の上。女三宮が柏木に見せた立ち姿と見返り姿の意義。死にゆく紫の上の手のゆくえ…。ささやかなふるまいから浮かび上がる姫君たちの真実。
目次
1 絵に描きたる葵の上(葵の上という姫君;古代における絵の力;源氏物語のなかの「絵」;「しすゑられ」る葵の上;葵の上の「まみ」のゆくえ)
2 立つ女三宮(柏木の発病;垣間見られる女三宮;「たつ」ものたち;臥す柏木;見返る女三宮―幻想の天女)
3 紫の上の手のゆくえ(手をとられる紫の上;「手」をめぐって;手をとること;手をとらえる光源氏;光源氏と紫の上の手のゆくえ)
著者等紹介
太田敦子[オオタアツコ]
1996年3月國學院大学文学部文学科卒業。2003年3月國學院大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専攻は平安文学、博士(文学)。現職、國學院大学兼任講師、共愛学園前橋国際大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ず〜みん
4
現代の我々の価値観からすると非合理的に見えたり、身体に悪いと思われたりする行為をなぜ、深窓の姫君たちはしていたのか。立つことをはしたないと言われる理由、絵に描かれたような姫の意味など。厚さと値段的に仕方ないのだけれど、人に姿を見せない貴族女性の生活は、日に当たって鬱を予防するより優先されねばならないどんな理由があったのかなど知りたかったなぁ。2023/06/17
てくてく
3
源氏物語の中で見過ごされがちだが何かしら作者が意図したであろう叙述の中から、「絵に描きたるものの姫君のやう」と評された葵上の描写、柏木が女三宮を見てしまった時の女三宮の立ち姿の意味、そして死に近い紫の上の手をとったのが養女の明石中宮だった意味および「手」に関する表現を取り上げている。立ち姿の考察が面白かった。2023/11/11