内容説明
『伊勢物語』―『源氏物語』をはじめとする多くの文学作品に影響を与えるとともに、長い間読み続けられ親しまれてきた王朝貴公子の一代記。日本を代表する古典としての地位を確固たるものとしている一方で、古典の授業などでは断片的な章段のみが扱われがちであり、全体を通して読んでこそ分かる魅力を知る人が少ないことは、実に惜しむべきだろう。主人公の人間性、物語に仕掛けられた謎など、『伊勢物語』をより楽しむきっかけを昔男の「青年期」から読み解く。
目次
1 昔男の結婚―初段とその関連章段
2 后がねの姫君との許されぬ恋―第三段~第六段
3 東下り、傷心の旅―第七段~第九段
4 東国での昔男の行状―第十段~第十五段
5 紀有常という人―第十六段
6 昔男の青春から光源氏の青春へ
著者等紹介
妹尾好信[セノオヨシノブ]
1958年1月7日徳島県阿波郡(現阿波市)に生まれる。1980年3月広島大学文学部文学科卒業。1984年3月広島大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。専攻/学位:古代・中世国文学/博士(文学)。現職:広島大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ayako
2
16段までの昔男の青年期がわかりやすく解説されている。原文ではぼかして記述している箇所の謎解きが楽しい。また、伊勢物語が源氏物語に影響を与えていた事は知っていたが、伊勢物語の話自体をベースにしたものが沢山あると初めて知った。17段以降もこのように解説した本があれば良いのに。2018/07/10
ちあき120809
0
朧化された文章が解釈の余地を生み、物語の奥深さを演出する『伊勢物語』。その珠玉の一話一話を繋ぎ合わせ、"昔男"の偶像を紡ぎ出そうとする試みが面白い。時間軸はシャッフルされ、後世で挿入された文章や断章も存在し、誕生の経緯も原型も今では決して知る事ができない古典の傑作を、筆者は和歌の出典等の状況証拠を基に読み解こうとする。時系列シャッフルと聞くと映画「500日のサマー」や漫画「それでも町は廻っている」、アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」等を思い起こすが、その技法を1000年も前に確立した日本の古典文学はやはり偉大だ。2017/05/10
さき
0
とても丁寧に解説してあって、確認をしながら読むのにはうってつけだと思った。ぜひ、16段以降の続編も読んでみたい!新典社さん、よろしくお願いします!笑2012/06/02
みに
0
「青春」という言葉は引っ掛かるが、16段までの昔男の行動をわかりやすく解釈している。キーパーソンは紀有常。2010/02/09