出版社内容情報
《内容》 各学会がそれぞれに制定した医学用語は,横の連携がないまま同一概念を別の用語で指示したり,原語の出典を誤解したまま用いられたりしていることがしばしば起こって,混乱している.古今東西の該博な知識を駆使して,望ましい医学用語のあり方を把握し,斯界に一石を投ずる問題提起の書.
《目次》
執筆者紹介
はじめに
● 古代の誤りはご愛嬌
● 「帝王切開」は誤訳か?
■ 体液病理学説の遺物
● 体液病理学説に沿った病名
● おできも沸騰?
■ 体液説と血液型
● アラビア医学も潜入
● 部位がずれたもの
● まっすぐな(もの)といえば直腸
● 外科は手仕事
第2章 原語の混乱にも要注意
● 木に竹を接いだ造語
■ ギリシア語とラテン語の関係
● 血圧は manometer では測れない
● hidro-≠hydro-
● infantはしゃべれない
■ 母国語に気をつけろ
● ヘロインは英雄だった
● hの扱いが軽い英・仏語
● 食えない三流短縮語
● 短縮語は仲間うちの隠語だ
● 悩まされる略語の氾濫
■ 略語とピリオド
● 首相も悩む略語の読み方
第3章 訳語も玉石混淆
● 「翻訳・義訳・直訳」の出来,不出来
■ 『ターヘル・アナトミア』とは
● 動脈,静脈は秀作
● 大泉門は大きいか小さいか
● 鎖骨の本体は鍵骨だ
● 精神か神経か
● ウイルスは濾過性病原体?
● 本態不明の「本態性」
● 和訳をあきらめた流行病
● カタカナ病名アラカルト
● ギリシア文字の和訳は?
第4章 東西造語比べ
● そっくりさんは西方断然優勢
● 細胞は英語が始まり?
● 日本人は僧帽が好き?
● 形態模写の巧拙
● 東西比喩比べ
● 秀作の多いやまとことば
● 指の利用法
■ 強心剤ジギタリス誕生の経緯
● 役と疫と免疫と
● 病名の和洋たとえ比べ
● 皮膚病は形態模写の宝庫
● 風の意味
● フランス語からエスプリの拝借
第5章 東西色好みくらべ
● 亀頭vsどんぐりは東に軍配
● 「腟ハ男茎受容ノ室ナリ」
● タマとフクロ
● ペニスはペンダントや振り子の仲間
● 会陰の範囲
● vulvaってどこ?
● 追放されたヴィーナス
● fe-は吸うこと
● coitusは完了形?
第6章 神話と医学用語
● ギリシア神話は和訳しづらい
■ 医学のシンボル:アスクレピオスの杖
● ギリシア神話に由来する医学用語の数々
● 珍しいギリシア神話の直出し
● 化学物質になったギリシアの神々
■ 麻酔薬エーテルの開発
● コンプレックスにも神話を借用
● 旧約聖書からは話題が少ない
● エジプト神話にネタはあるか
● 日本神話はお呼びじゃない
第7章 混乱するカタカナ書き
● 物質名のカタカナ書きは大混乱
● 酵素(-ase)のアーゼは日本語だ
● ゲン(-gen)も日本語の「原」だ
● 体の-someはソームかゾームか
● カタカナ訳語の複数扱い条件
● -meterはメータかメーターか
● 子音が重なれば促音か
● fやvの日本語読み
● lとrは大違い
● アスピリンはピリン剤?
第8章 人名付き用語の悩み
● 外国人名に訛りはつきもの
■ 欧米の固有名詞の漢字書きからの変身
● バージャー病まがいのあれこれ
● マルピーギかマルピギーか
■ アクセント音痴のカタカナ語
● 解剖学は人名嫌い?
● 惑わされる人名の語尾変化
● 物質名にも人名が潜入
● ワクチンは雌牛から
● バゼドウとグレーヴズの争い
● アダムズとストークス,どちらが先?
● ブロカ野発見の先有権者
● 日本人名はなぜ無視されたか
■ 北里博士もはめられたのだ!
● 人名まがいのカタカナ病名
● 人名らしくない人名付き病名
● 物語からは誤った引用も
● Syphilis は架空の人名,梅毒は和風の珍名
第9章 国語審議会・用語委員会にもの申す
● ものは変わらず名は変わる
● 江戸時代の病名
■ 律令時代から使われた病名
● 漢字制限と医学用語の改変
● 難字がはびこる病名
● 略字体は常用漢字の特権?
● 同音異義語は迷惑千万
● 腔を「くう」と読ませてしまう医学界
● 橈骨よ,おまえもか
● 弛緩を「ちかん」と読む医学生
● 排卵は卵を捨てること?
■ 排泄ってどんなこと?
● 毛穴か毛孔か,孔か口か
● 洞か前庭か
第10章 sub-が下とは限らない位置付けの乱れ
● sub-は下とは限らない
● 天井に底がある怪
● 傍(旁)――か,――傍(旁)か,――近接か
● hypochondriumってどこ?
● 上,下の位置について
● 男にダグラス窩はあるか
● 番号付けの功罪
■ 右利き,左利きも差別用語だ
● アルファベット付けの不可思議
■ 記号の出典
第11章 別名混乱集
● 臨床で無視される関節名
● 吸気,呼気の意味
● “rate”の訳語
● 心拍数と脈拍数の混用
● 無意味な別名
■ もっと無意味なカタカナ別名
● 早いもの勝ち?
■ 用語の統一とそれを阻む 因子
● 改称しても同義語が増えるだけ
● アドレナリンは通俗名?
■ アドレナリンとエピネフリンの葛藤
● エチルアルコールとエタノールの勝負は?
● 卵管の英語表現は乱立
● 英文中のラテン語複数の混乱
● なぜか気障(キザ)な英文中のラテン語病名
■ ラテン語をどう発音するか
● レプラは差別用語か?
■ 処方箋や論文に頻用されるラテン語やその略語
● 英文中の解剖学名にも一言
■ 和文中のラテン語名の書き方
● 古典的症状名は復活の兆し
■ 適応か順応か,はたまた順化か馴化か
第12章 医学用語のマスコミ汚染
● サーモグラフィーはテレビに映らない
● トラウマのマスコミ汚染
● 下剤でダイエット?
● エアロビクスは激しい運動?
● テニスクリニックなんてできるの?
● ストレスは襲う側だ!
● 「酸化ストレス」はストレスか
● 環境ホルモンというナンセンス
● ピロリ菌もマスコミ造語?
● がん(癌)の範疇は?
● 「熱中症」の正しい使い方
● 症候群の乱用
第13章 拙劣な官製用語
● 低出生体重児と未熟児の使い分け
● 低出生体重児は低体重出生児だ
● 合計特殊出生率ってなんのこと?
● 感染症か伝染病か
● 感染症か食中毒か
おもな参考図書
索引
あとがき
目次
古代の誤りはご愛嬌
原語の混乱にも要注意
訳語も玉石混淆
東西造語比べ
東西色好みくらべ
神話と医学用語
混乱するカタカナ書き
人名付き用語の悩み
国語審議会・用語委員会にもの申す
sub‐が下とは限らない位置付けの乱れ
別名混乱集
医学用語のマスコミ汚染
拙劣な官製用語
著者等紹介
小川徳雄[オガワトクオ]
1953年名古屋大学医学部卒業。1975年愛知医科大学医学部教授(生理学第二講座)。1995年愛知医科大学名誉教授。1999年東海医療技術専門学校長、現在に至る。専門分野は体温調節、発汗機序、温度環境適応
永坂鉄夫[ナガサカテツオ]
1959年名古屋大学医学部卒業。1974年金沢大学医学部教授(生理学第一講座)。1998年金沢大学名誉教授。2000年金城大学副学長・教授。現在に至る。専門分野は体温調節、温度環境適応
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。