内容説明
日本民俗学の創始者にして、近代日本の学問と思想の世界に屹立する巨人・柳田国男。歴史と生活文化万般にわたるその知の遺産は、後学にどう受け継がれたのか?戦後経済の発展とその後のグローバル化は、人・知・金の流動化によって地域社会を解体し、これまでの民俗学のフィールドを崩壊の瀬戸際に押しやってきた。この学的基盤の危機に対応する視点と方法を問われつつ、昭和から平成へと模索しつづけた柳田なきあとの民俗学。その現在を戦後の学史に照らして検証し、アカデミズムと野の学の緊張を通して未来を切り拓く課題を探る。
目次
特集1 福田アジオの民俗学をめぐって(戦後民俗学の変貌と福田アジオ―緒言にかえて;座談会 アカデミック民俗学と野の学の緊張―福田アジオ氏に聞く;地域で深く、世界に広く―座談会後記;福田氏との“対論”を終えて ふたたび「野の学」へ―民俗学は誰のものか;福田アジオ論―アカデミック民俗学の堡塁;「主体化」の問題をめぐる柳田国男民俗学と福田アジオ民俗学の科学認識論的比較;重出立証法の可能性―福田アジオ理論の誤謬的需要とその影響に関連させて;伝承母体論再考―共の民俗学のために;失ったものは何か―「土佐民俗」の歴史)
特集2 戦後民俗学の新視点(上野英信の記録文学成立過程と民俗学―「“ただ中で”書く/生み出す」という方法;日本の敗戦と柳田国男の民俗誌―『北小浦民俗誌』対戦後民俗学の一問題;「神道私見」の戦略;安丸良夫からみた柳田国男論―柳田民俗学の「批判的分節化」の手掛かりとして;柳田国語科教科書と教師用指導書;豪農と地域の教育文化活動―三河古橋家三代を中心にして)