内容説明
キリシタン伝説の「奇蹟譚、殉教譚をはじめ、摩訶不思議、奇想天外、荒唐無稽な魔術、妖怪譚まで多種多彩」な様を丹念に掘りおこした本。詳細な注釈を付けて時代背景や文献と伝承との関連を補って「百話を集めた」意義を大きく超えている。
目次
キリシタン伝説略史
1 許教時代―天文十八年(一五四九年)~慶長十八年(一六一三年)(聖師の奇蹟―鹿児島;見るなの人形―愛知・一宮;雨乞い―熊本・天草 ほか)
2 弾圧時代―慶長十八年(一六一三年)~寛永十八年(一六四一年)(占い師の予言―京都;牢中でキリシタンに目覚める―東京;石になった妻―長崎・島原 ほか)
3 禁教時代―寛永十九年(一六四二年)~明治六年(一八七三年)(ねずみの昇天―愛知・葉栗;とんびとねずみ―岐阜;八兵衛の夜泣き石―東京 ほか)
“昭和のキリシタン伝説”(「日本で死んだキリスト伝説」について;「ジュリア・おたあ伝説」について)
著者等紹介
谷真介[タニシンスケ]
1935年東京に生まれる。日本文芸家協会会員。編集者をへて、児童文学の分野で活躍する。この間、キリシタン史、沖縄史に関心を示してきた。1992年、巌谷小波文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
200
ザビエルが地獄の鬼から少女を守る話から始まる。各話の注に、類話の分布や日本の伝説との融合、歴史的背景、後日談などを掲げている。天狗、ノビアガリ、枕返しなどお馴染みの日本の妖怪が登場したかと思えば、聖母の恩寵・聖遺物の出現など奇蹟を核とした話、ノアの箱舟など聖書由来の話、聖書外典の「聖家族の避難」に似た話もある。弾圧や殉教の話も多く、その苦しみと救いが心に迫る。全般に封建的価値観と混じり合い、切支丹を邪宗と見なす話や、山田風太郎の忍法帖みたいな妖術の話もある。こうした日本的逸脱は長い宣教師不在のせいだろう。2024/11/10
かすが
0
私淑しているキリスト教徒の宗教博士のおススメだったので読みました。彼女のキリスト教観が現代日本のキリスト教からしてみると異質なのはわかりますが、私はそれに慰められた側なので。ここに書かれている”かつての日本人キリスト教徒たち”が紡いだ世界観について、そのままトレースすることはできぬ哀しき現代人の身なれど、エッセンスは受け取ることができるのが希望です。追って、キリスト教徒たちの雨乞い・天草四郎の龍化伝説、原城周辺のマリア像にかかわる怪奇譚などについて調べていきたいと思っています。2025/02/14