出版社内容情報
土器を赤く塗り、棺に朱を敷きつめ、魏志倭人伝に「朱丹を以てその身体に塗る」と記された弥生人。その朱の原料、辰砂を採掘していた痕跡が徳島県阿南市ではじめてみつかった。山中の発掘調査から、鉱脈を追いかけ岩盤を切り崩す採掘の実態を明らかにする。
内容説明
土器を赤く塗り、棺に朱を敷きつめ、魏志倭人伝に「朱丹を以てその身体に塗る」と記された弥生人。その朱の原料、辰砂を採掘していた痕跡が徳島県阿南市ではじめてみつかった。山中の発掘調査から、鉱脈を追いかけ岩盤を切り崩す採掘の実態を明らかにする。
目次
第1章 弥生人が求めた朱(辰砂採掘遺跡とは;弥生の赤 ほか)
第2章 辰砂採掘遺跡の探究(採掘場への道のり;辰砂採掘遺跡の発見 ほか)
第3章 採掘の実態解明へ(ズリ場と鉱脈の発見;みえてきた露天採掘の実態 ほか)
第4章 朱の生産にせまる(辰砂はどこへ;朱をつくる弥生人;朱塗り工房の風景)
第5章 若杉山辰砂採掘遺跡のこれから
著者等紹介
西本和哉[ニシモトカズヤ]
1982年、兵庫県姫路市生まれ。奈良大学文化財史料学博士後期課程単位取得退学。2009年、徳島県教育委員会入庁。現在、公益財団法人徳島県埋蔵文化財センター主任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月をみるもの
14
自然と人間の関わりにおいて、農業はどうしても人間の都合のよいように自然を改変する、、というイメージがつきまとう。それに対して鉱業は(1)自然の恵みたる鉱物を人間が見つけ出し(2)採掘することで自分の手元にとってきて(3)さらに選鉱し抽出処理をする という多段階のステップによって、自然を少しずつ人間の側に引き寄せる活動という感じがする。しかも辰砂は、石炭のように燃やせるわけでもなければ、黒曜石のように刃物として実用になるわけでもない。葬送儀式などに用いられる純粋な「第二の道具」だ → つづく 2023/08/30
うしうし
5
徳島県阿南市に所在する弥生時代後期~古墳時代前期に比定される「朱」を生産した遺跡の紹介。「朱」の原料となる熱水鉱脈には露天採掘と採掘坑による採掘があり、いずれも鉄器を使用せず、石器のみが使用されていたようだ。また、内面朱付着土器は「朱とニカワ水を調合して赤色赤色塗料をつくり出す際に使用された容器」であったと推定(p80)。2023/07/31