出版社内容情報
今からなのだ、と思う
生き行くためのことばの杖
韓国語で、愛は??(サラン)と言い、人は??(サラム)と言う。そして人の生そのものを?(サルム)と呼んでいる。この世界の成り立ちと、この世界をひきうけていかざるを得ない人間にとって、何よりもかけがえのない愛、人、生、という言葉が、?(サ)‐?(ル)という同じ音から始まっている。同じ音でとらえずにはいられなかった祖先たちの思いを、私は信頼し、尊敬したい。そして同じ音が繰り返される中で、言葉そのものにためこまれてきた力、としか言えない何かを、これからも確かめ続けていきたい。
--本書より
三メートルもの長さの白いスゴンはあの世とこの世を結び、生き行く者たちの長寿を祈るという願いがこめられているのよ、と姉は教えてくれた。没後三十年がたって、姉のエッセイ集が発行される。ああ、ここで姉のことばはまた生まれ変わることができた。
--李 栄「姉・李良枝のこと」より
没後30年。37歳で亡くなった芥川賞作家の初エッセイ集。日本と韓国のはざまを生き、ふたつの民族性の間で引き裂かれる若き日の苦悩や、韓国に留学し伝統的な踊りや音楽をまなび、ひとりの女性として自身をみつめる珠玉の文章。妹の李栄さんが姉の最後の日々を綴ったエッセイも併録。
内容説明
没後30年。37歳で亡くなった芥川賞作家の初エッセイ集。日本と韓国のはざまを生き、ひとりの女性として自身を見つめる珠玉の文章。大庭みな子との対談のほか、詩や資料も収録。
目次
詩 木蓮に寄せて
1 旅の風景について(木蓮によせて;富士山;「寿」)
2 韓国の踊りについて(巫俗伝統舞踊―〓(モッ)の息吹
韓国巫俗伝統舞踊)
3 文学と文化について(愛を知り生の意味を確かめる;対談 湖畔にて(大庭みな子)
恨とほほえみ
私の「ゲーテとの対話」
私たちのDISCOVERYを求めて)
4 はざまを生きることについて(わたしは朝鮮人;散調の律動の中へ;若者に伝承されていく朝鮮人蔑視)
著者等紹介
李良枝[イヤンジ]
作家。1955年3月15日、山梨県南都留郡西桂町で在日韓国人の両親のもとに生まれる。早稲田大学社会科学部中退。大学在学の頃に伽〓琴、韓国語、韓国舞踊を習い始め、1980年から東京と韓国の往来を繰り返す。ソウル大学国語国文学科に入学し、小説「ナビ・タリョン」を文芸誌『群像』に発表。1988年にソウル大学を卒業し、翌年に小説「由煕」で芥川賞受賞。1992年、東京で長編「石の聲」の執筆に専念していたところ病に倒れ、5月22日に急逝。享年三十七(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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