出版社内容情報
縄文集落の本当の姿は? 北に八ヶ岳、南に富士山、西に南アルプスを望む山梨県北杜市の茅ヶ岳山麓で、“縄文王国”と称されるほど繁栄した縄文時代中期の集落跡がみつかった。竪穴住居ばかりでなく、川べりの作業場やムラの道など生活の場がセットで出現した希有な遺跡から追う。
目次
第1章 縄文集落がみつかった(梅之木遺跡の発見;保存か開発か)
第2章 リアルな縄文集落を求めて(梅之木遺跡の発掘調査;縄文中期の環状集落だ ほか)
第3章 梅之木縄文ムラの生活を追う(ムラの生活を支えた道具;磨製石斧はどこから来た? ほか)
第4章 新たな住居像を求めて(みんなでつくる縄文ムラ;竪穴住居をどう復元するか)
第5章 生きている史跡
著者等紹介
佐野隆[サノタカシ]
1964年山梨県生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。現在、北杜市役所教育部参事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
43
新泉社のシリーズ「歴史を学ぶ」の最新刊。このシリーズでは、2004年以来全国の遺跡をテーマにして、一遺跡一冊にまとめる形で紹介している。本冊で既に百数十点、発掘報告書と一般書を繋ぐ役割を果たしている。本冊も山梨県八ヶ岳山麓の縄文時代中期の環状集落遺跡である梅之木遺跡について、発見の経緯から国史跡として保存活用がなされるまで、発掘担当者の苦労話を交えて、経過が記される。本遺跡の特徴は、水場遺構や縄文の道などを含み、集落全体をいわば生きた状態で保存しようとしていることだろうか。水洗選別やレプリカ法などの最新の2022/03/09
月をみるもの
17
三内丸山みたいな派手さはないが、川筋におりる「道」の存在、周辺の鉱物や植物利用、実験考古学による縄文住居再現の試みなどなど、最先端の研究と地元での活用・保存がみごとに噛み合ってる梅之木遺跡。次回山梨・長野に行く時は必ず行こう。2023/06/17
月をみるもの
12
再現されてる縄文住居の屋根は多くの場合茅葺になってるんだけど、とくに積極的な根拠はないんかい。2022/06/16
うしうし
2
山梨県北杜市にある縄文時代中期(井戸尻式~曽利Ⅴ式)の環状集落「梅之木遺跡」の概要。集落に隣接する川べりの作業場や川へ下る道なども確認されている。なにより面白かったのは、竪穴住居の復元考察。一般にみられる茅葺き屋根ではなく、土をかぶせた屋根の形で復元されている。確かに、屋根素材にするカヤの絶対量が足りないことや固いカヤのカン(茎)を刈り取る道具が縄文時代には見当たらない(p76)というのは納得。また、住居の土を掘るのに、打製石斧は役に立たず、鹿角が有効だという指摘(p80~81)には驚いた2022/09/17