内容説明
秋山理乃は歴史が大好きな中学1年生。高校の世界史の先生だったキシローじいちゃんと東京で開かれた「ラスコー展」に行って、謎深い洞窟壁画の魅力にすっかりはまってしまう。そして、キシローじいちゃんの教え子で、洞窟壁画の研究者のタバタさんの案内で、フランスに本物の洞窟壁画を見に行くことに。旧石器時代の壁画を見た理乃は、なんで大昔の人はわざわざ真っ暗な洞窟に壁画を描いたのか、という疑問で頭の中がいっぱいになる。帰国後も、タバタさんとじいちゃんの協力のもと、文化祭で発表する「美術のはじまり」というテーマの答えを求めて、理乃の奔走は続く…。
目次
プロローグ はじめての文化祭を終えて
第1章 洞窟壁画って何?
第2章 春休みのフランス旅行1―ボルドーとヴェゼール渓谷
第3章 春休みのフランス旅行2―レゼジーとパリ
第4章 動物と人間の違いって何?
第5章 文化祭に向けてのアイディアをまとめる
エピローグ―10年後の野外調査
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
82
13歳の理乃が元歴史教師の祖父と洞窟壁画の研究者タバタさんの案内で、フランスのラスコー4やヴェゼール渓谷の先史的景観と装飾洞窟群の世界遺産を訪れ、何のために洞窟壁画を描いたのか、そもそも人間が美術を制作するのはなぜかという疑問に突き当たる。パリの人類博物館、茅野市の尖石縄文考古館も訪れ、旧石器時代のヴィーナス像の世界的共通性なども絡めて、人間にとって視覚シンボル・象徴とは人間が社会的生き物であり、コミュニケーションの役割も大きかったという指摘は、考古学、美術、行動生態学に及ぶ重要な観点で深い読み物である。2021/02/20
☆よいこ
78
中学1年の秋山理乃(あきやまりの)は歴史部の発表テーマに悩んでいた。高校世界史の元教師の祖父と一緒に「ラスコー展」を見て洞窟壁画に興味を持つ。専門家のタバタさんに話を聞き、春休みにフランスに行く。実際に洞窟壁画やルーブル博物館を訪ねて、文化祭の発表をまとめていく。▽巻頭にカラーで動物壁画の写真や解説、洞窟周辺の地図などが詳しくあり分かりやすい。物語になっているので、読むだけでなんかわかる。調べたことをメモし、分類し、まとめていく作業がわかる。2021年刊。良本2022/09/28
kuukazoo
13
10代向けのノベル仕立ての本だが、ラスコー及び周辺の洞窟壁画について詳しく解説されており勉強になった。中1の歴史好きの少女が展覧会でラスコーの壁画を知ったのをきっかけに、旧石器時代の人々が洞窟の壁に動物たちの絵を描いた理由や美術という行為の意味について、元世界史教師の祖父や教え子の研究者たちの助けを得ながら自分なりの答えを見つけようとする。美術はコミュニケーションの手段、というのは興味深い。2024/12/31
Bridge
10
美術の教科書や世界史の教科書で必ず目にするラスコーの壁画。実はラスコーだけでなく、ヨーロッパ各地に洞窟壁画があること、描かれた動物が時代によって違うこと、具象画だけでなく抽象的な図案ものこされていること、などなど初めて知ることが満載。 ヴェゼール渓谷へ、そして「ラスコー4」に行ってみたい! 巻末には「洞窟・施設・博物館案内」あり。2021/05/13
ぽけっとももんが
8
わたしも「ラスコー展」行ったんだ。再現された洞窟に驚いた。いつも短い旅程なので時間が足りなくて、駆け足で見たのが未だに残念。でも見られて本当によかった。さて、洞窟壁画とは、誰が何のために描いたのか。そもそも絵とは、美術とは何か。中学生の理乃ちゃんが、学んだこと、疑問に思うことを小札に書き留め、それを最後にまとめていくやり方で読むわたしたちも理解を深めていく。ただ、このまさに内容そのもののタイトルはわかりやすいことこの上ないけれども、ちょっと安易すぎやしませんか。2021/07/04