内容説明
ことばでは言えない生のために―。「世の中の出来事は過ぎ去ってしまうと口を閉じる。過去とは、犯人が現場に自分に有利な証拠だけを残して逃走してしまうのと似ている。」現代韓国を代表する作家キム・ヨンスが、自らを物語ることばを持てなかった者たちの語りえない声に耳を澄まして書き上げた短篇集。
著者等紹介
キムヨンス[キムヨンス]
金衍洙。1970年、慶尚北道金泉生まれ。成均館大学英文科卒業。1993年、詩人としてデビュー。翌年、長編小説『仮面を指差して歩く』を発表。その後、話題作を次々と発表。文学、思想、歴史、社会科学など、広範な読書体験に裏打ちされた文体で多くの読者を魅了し、韓国現代文学の第一人者と評されている。三作目の短篇集となる2005年発表の『ぼくは幽霊作家です』で大山文学賞を受賞。ほかに東仁文学賞、黄順元文学賞、李箱文学賞など数多くの文学賞を受賞し、エッセイスト、翻訳者としても活動している
橋本智保[ハシモトチホ]
1972年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。韓国文学の訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かもめ通信
23
面白かった!解説にもあるとおり、一人称の語りに徹した作家が自らを物語ることばを持てなかった者たちの語りえない声に耳を澄まして書き上げた物語であることはまちがいなく、その意味において“幽霊作家”なのだろう。もう一つ、9つそれぞれが違った個性を持って語りあげられていることからして、おそらくこれキム・ヨンスは、ハルキや『春香伝』以外にも、いろいろな作家や作品から特徴的なエッセンスを拾い上げ、その作家になりきったつもりで書いているのではないか、その意味でも優れた“ゴーストライター”と言えるのではないかな。2021/10/01
kaoriction@感想&本読みやや復活傾向
20
歴史は、ほんの些細なズレや、偶然の連続で大きく変わる。もしも、あの時、〜たら…いま私の生きる世界は違う場所だったかもしれない。「小説によって歴史を書き直す」試み。歴史となった、でも、知らない時間軸、知らない世界を生きた、主役にはなれず埋もれている「私」の物語、9編。韓国の史実には疎いので理解し難い部分もあったが、それぞれの「私」を通して見る世界は面白かった。「あれは鳥だったのかな、ネズミ」「南門古詞に関する三つの物語と、ひとつの注釈」「伊藤博文を、撃てない」「恋愛であることに気づくなり」が好き。2020/12/08
星落秋風五丈原
14
9編中ハッピーエンドが1つしかない。2020/11/09
本の蟲
8
ネットの中だけならともかく、大統領や政府広報までやべーレベルの反日であり、敵役日本人は当たり前。日本陰謀論の小説もさぞ溢れているだろう隣国、韓国。韓国文学はSFを数冊読んだだけだが、現代韓国文学の第一人者による韓国史を題材にした短編集ということで読んでみた。概ね社会や歴史に翻弄される人の機微を描いており、「語られるものはすでに誘導や解釈を経て歪んでいる」という俯瞰した立場で共感できる。まあ国や社会やイデオロギーにこれだけ翻弄されても学習せず、証拠や歴史資料第一主義にならないのは終わってるが…2021/12/19
ののまる
7
少し話に入り込みにくかったけど、ネズミの話は好きだった。2023/10/05
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