内容説明
マメ類を栽培し、クリ林やウルシ林を育てる…狩猟採集生活をおくっていたとされる縄文人が、想像以上に植物の生育環境に積極的に働きかけ、貴重な資源を管理・利用していた。「植物考古学」の最新成果をカラー写真・図版で紹介。
目次
1 「人と植物の関わりの文化史」をもっと知ろう!
2 縄文人の植物利用―新しい研究法からみえてきたこと
3 縄文人は森をどのように利用したのか
4 マメを育てた縄文人
5 縄文人がウルシに出会ったのはいつ?
6 適材適所の縄文人―下宅部遺跡
7 下宅部遺跡の漆関係資料からわかること
8 縄文人と植物との関わり―花粉からわかったこと
9 イネと出会った縄文人―縄文時代から弥生時代へ
著者等紹介
工藤雄一郎[クドウユウイチロウ]
東京都立大学大学院人文科学研究科修了、博士(史学)。専門分野:先史考古学、年代学、第四紀学。現在、国立歴史民俗博物館研究部考古研究系准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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to boy
24
少し専門書よりですが写真や図版がたくさんあってなかなか 面白い一冊。お米はもちろんジャガイモやトマト、キャベツなど弥生時代以降に入ってきた食べ物の無い縄文人はどういう生活をしていたのか、興味あるテーマ。クリや栃の実、小豆(原種)などをあく抜きしながら豊かに暮らしていたようです。驚いたのはウルシの話。9千年前の遺跡から発掘された漆塗りの土器は世界最古のウルシ塗り。中国原産とされているウルシがなぜ縄文時代にあったのか。歴史のロマンです。2024/04/24
月をみるもの
17
季節変動より長い時間スケールは考えずに移動し続ける暮らし→ 同じ場所にとどまって10年先を考える暮らし=空間移動から未来予測へ。 人類史においては、農耕の始まりよりも定住の方が本質的なエポックなのではないかと言う気がしてきた。2020/04/11
sigismund
5
植物学の視点から縄文時代を捉えてみると、あら不思議、豊かな縄文の世界が開けてくる。フジやササで編み物を編み、計画的にクリの木を栽培し、ウルシを育てて漆器を作る。竪穴に住み、狩猟採集でその日暮らすのがやっとな野蛮な時代、という考え方はもはや旧世界の遺物。五年先、十年先を考えながら上手に植物と付き合って利用してきた縄文人たち。気軽に自然資源を使えるぼくたちと縄文人たちは考え方が全く違うのだろう。前を向くのをお休みして、ちょっと立ち止まって振り返れば、豊かな生活を送るヒントが隠されている、そう感じた。2014/07/03
本の紙魚
4
今の住まいの近くに縄文時代の遺跡があるとのことで、「実際はどんな暮らしをしていたんだろう?」と想像をたくましくする参考書として手にとった。木の実の利用やつる植物、穀物を育てていた様子などが図や資料と共に詳細に記されている。研究資料なので読み物としては少々つらいが、縄文前期から後期になるにつれて生活が変化していったことを、植物利用の視点から解説していて、まだまだ研究が進まないとわからない部分もたくさんあると正直に書いているところも良い。ウルシ伝来についての謎が解ける日はくるのだろうか?今後の研究も楽しみだ。2021/03/10
やま
4
縄文時代の人々が身近にある植物をどのように、育て、加工し、使い、食べたのか。ここ近年あきらかになった発掘事例を通して語られています。もともと日本になかった植物が縄文の古い時代に日本に渡来していたり、どのように栽培されていたかなど、写真や図を多用してわかりやすくなっています。縄文人たちが原始時代のイメージから、高度に進んだ社会性をもった姿に見えてきました。自然資源の利用度では現代人よりよっぽど進んでいたようです。2014/09/01
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