内容説明
母親がある日とつぜん妊娠したことを告げたとき、母親との二人だけの生活はもろくも崩れ去った。少年はこのどうしても許せない事実にひとりで立ち向かわねばならなかった。新しい親子関係を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
38
父親は妻子を置いて出て行ったままの母と息子の2人暮らし。自分では何も決められない頼りない母をずっと支えてきた息子。2人だけの平穏な生活に飛び込んできた母の妊娠。受け入れ難い息子の辛い気持ちが伝わってきます。父親の名前を伝えようとしない女性、母と息子だけの強い絆(マザコン)といった事につい否定的になってしまう私でしたが、この本を読んでいてそんな自分を反省しているのに気付き驚きました。それぞれに複雑な哀しみ、切なさがある。安易に決めつけてはいけなかった。題名の「優しさ」の意味を痛感する作品でした。2019/10/29
遠い日
9
母子二人の暮らしに突如発覚した母の妊娠。15歳という多感な時期の少年チップの心は揺れて荒れる。今の生活が崩れ去ることへの恐怖、母という存在のぶれを受け入れられないチップの苦悩が生々しい。そして母アンもまた、自分の人生の舵を取り直すことに苦しむ。愛の延長上にあったはずの妊娠がとんでもない歪みをもたらすことに気付き、切り捨てるべきは何かを考える。母と息子の相容れない心模様、チップのゆるやかな成長がもどかしくも切々と描かれる。生まれ来る命と向き合うことで見えたもの。「優しさ」という許しが胸に響く物語だ。2014/02/10
シエロ
6
“優しさ”とは、時に自分の幸せや欲求よりも、相手にとって最善のものを明確にし、身を引くということ。愛する者を手放した先に、新たな形の幸せがきっと訪れるはず。2021/03/20