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内容説明
近代ヨーロッパ社会の諸相が織り込まれたシュピーリ文学をひもとき、名作児童文学の傑作『ハイジ』誕生の現場に肉薄するとともに、数多くの翻訳・翻案・映像化からなる「ハイジ現象」のうねりを鳥瞰し、スイスの国民神話にまで上り詰めた「アルプスの少女」の魅力の正体を探る。
目次
第1部 ヨハンナ・シュピーリの文学世界(ヨハンナ・シュピーリの修業時代と遍歴時代;匿名作家J・Sの歩み―『フローニ』ほか初期作品;自然と教育のせめぎ合い―『ハイジ』:1;キリスト教の複雑な役割―『ハイジ』:2;女性の大学教育と職業―『ジーナ』;社会運動へのまなざし―『コルネリ』ほか後期作品)
第2部 「ハイジ現象」の射程(「アルプスの少女」神話の系譜―ミミリ、アデライーデ、ハイジ;シャルル・トリッテンのフランス語『ハイジ』続篇;少女のための物語―日本の『ハイジ』受容の始まり;『ハイジ』映像化の百年)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Alm1111
9
大変面白い本だった。単なるシュピーリの伝記と思ったら大間違い。19世紀スイスの宗教、政治、社会を丁寧に紐解きシュピーリが育った環境と思想を浮き彫りにしつつ、「ハイジ」を含む彼女の他著作に目をくばり、更に「ハイジ」の続編、映像化や日本での翻訳と挿絵、アニメ化の解釈が続くので読み応え満点。まともな文学扱いされなかった児童文学を学問として十分通用させた著者の分析と調査力に驚かされる。ドイツ語の文献を読み解き、シュピーリや「ハイジ」の古今東西の書評や考察を集め俯瞰してみせた力作だが、平易な文章でさくさく読めるも○2025/09/22