内容説明
自称・戦中派の奇才が、なぜ戦後文学界で圧倒的なきらめきを保ち続けたのか。怪奇・幻想・エロ・猟奇・SF的要素などの作品の奇想、風太郎自身の敗戦の記憶や死生観・ニヒリズム、敗戦から高度成長へという時代状況の三つの視点から『忍法帖』などの作品を読み、ジャンルを超えた「変格派」として風太郎を復権させる。
目次
第1章 戦後変格派・山田風太郎の教養―奇想の源泉
第2章 滅失の神話―“風太郎敗戦小説”考
第3章 『太陽黒点』論―最後の“敗戦小説”
第4章 「風太郎忍法帖」という歴史
第5章 戦後変格派の医学的・科学的奇想―性的科学小説からタイムトラベルまで
第6章 風太郎文学とキリスト教
第7章 風太郎の「近代的怪談」―最後の戦場
第8章 風太郎文学における闇の論理―愛の亡霊・悖徳の聖者たち
著者等紹介
谷口基[タニグチモトイ]
1964年、東京都生まれ。茨城大学人文学部准教授。専攻は近現代日本文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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図書館で同じ著者の「変格探偵小説入門」を借りるつもりだったが、見当たらなかったのでこっちを借りてみた。当たりだった。単著の風太郎論としては、決定版と言っていいのでは。改めて買い直さねば。タイトルの「変格」というのは、戦前の探偵小説の日本特有のバロック(流行りの言葉で言うなら、ガラパゴス)化のことではなく、風太郎読者にはお馴染みの「列外」、戦後探偵小説の中での異端という意味だろう。この本では、「黄色い下宿人」「ウサスラーマの錠」の分析に於いてそれが語られている。その手法は寧ろ戦前の純文学のものなのである。2013/10/24