内容説明
音楽によって「真のドイツ」を打ち立てようとした作曲家リヒャルト・ヴァーグナー。三月革命や統一戦争で国家の輪郭が激しく揺れ動いた時代、複数の「ドイツ」がせめぎあうなか、超政治としての芸術を実践した彼の「ドイツ」はいったいどこに向かったのか。19世紀ドイツのナショナリズムを新たに問い直す音楽史。
目次
第1章 出発点としてのコスモポリタニズム―最初期のオペラと著作にみる「ドイツ的なもの」(一八三四‐三九年)
第2章 パリでの挫折を経て―「フランス的なもの」に対する批判意識の芽生え(一八三九‐四二年)
第3章 ドレスデン時代―革命期の思想にみる「ドイツ的なもの」の理念(一八四二‐四九年)
第4章 『未来の芸術作品』と民衆の理念―チューリヒ亡命時代・1(一八四九年)
第5章 『オペラとドラマ』にみる「ドイツ的なもの」―チューリヒ亡命時代・2(一八五〇‐五一年)
第6章 祝祭劇場の構想とドイツへの帰国の途(一八五二‐六四年)
第7章 「最もドイツ的な国家」としてのバイエルン―ミュンヘン時代(一八六四‐六五年)
第8章 ドイツ統一戦争とヴァーグナー―トリープシェン時代(一八六六‐七〇年)
第9章 新生ドイツ帝国の誕生と「ドイツ的なもの」のゆくえ―ヴァーグナーの一八七一年
第10章 「ドイツ」はいずこに?―バイロイト時代(一八七二‐八三年)
著者等紹介
吉田寛[ヨシダヒロシ]
1973年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科(美学芸術学)博士課程修了。博士(文学)。同研究科助手、助教を経て、現在、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授(表象領域)。専攻は美学、感性学、表象文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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