出版社内容情報
2022年7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件。
これを受けて企画・配信された『ポリタスTV』の「宗教右派と自民党の関係――ジェンダーと宗教」(前篇・後篇)は、5日間限定の無料公開で10万回以上再生され、大きな反響を巻き起こした。
この配信コンテンツをもとに、全編書き下ろしでジェンダーやセクシュアリティ、家族をめぐる政治、それと宗教右派との関わりをまとめるのが本書である。
1990年代から2000年代初頭のバックラッシュから、安倍政権以後の家族や女性やLGBTをめぐる政策と右派・宗教との関係までを、具体的な政策や運動、テーマにフォーカスして解説し、フェミニズムの立場・視点から問題点を検証する。
知られざる宗教右派の実像と1990年代から現在まで続く苛烈なバックラッシュの実態を明らかにする問題提起の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
118
米共和党が同性愛やジェンダーフリーに反対する宗教団体と親和的なのは有名だが、日本でも深く政治に食い込んでいたとは。特に第二次安倍政権期には、旧統一教会と神道系政治団体が「家族を守る」を掲げて教育現場に浸透したプロセスを国民の大多数が知らなかった。リベラル派の失敗を衝き、自分たちこそ正義とのイメージを国民に浸透させた宣伝力は見事といえる。おかげで性別二元論に囚われたフェミニズムは動揺し、宗教右派の主張を女性が支持するのも珍しくなくなった。安倍暗殺事件を契機に、リベラルへの逆バックラッシュの可能性はないのか。2024/01/13
ネギっ子gen
57
【バックラッシュ時代のデマや妄言が、SNSなどで再び活用されている今だからこそ】1990年代から現在までの、ジェンダーやセクシュアリティについてのバックラッシュと宗教右派の関わりについて、性教育、選択的夫婦別姓、男女共同参画、LGBTQ+、「歴史戦」などのテーマで振り返る書。<「市井の女性」「普通の母親」などと自ら称し、女性の権利を打ち出しているかのようにみせながら運動を展開することも多い/杉田水脈のように「女性」を打ち出して活躍しながら、性暴力被害者の女性を攻撃することで出世してきた政治家もいる>と。⇒2024/08/01
kan
24
アメリカ留学中に大統領選を目の当たりにし、共和党の宗教保守から穏健派のグラデーションと使い分けを興味深く見ていた。アメリカは政治も日常生活も基盤が宗教だから大変だなあと他人事だったが、日本もそうか!と、点と点を結んで線にしてくれる一冊だった。主に自民党のこれまでの政策とロビイング、統一教会や生長の家や日本会議との密接な関わりと、地方自治体イベントやセミナー等に入り込み、市井の人の思想統制を図る細やかな活動に感心した。イデオロギーがなんであれ、政策や発言の意図を見抜く賢明さが国民に必要だと改めて感じた。2024/05/12
しんすけ
19
安倍晋三が殺されて明らかになったのは、自民党が「統一教会」や「生長の家」などの右翼と一心同体だったことだった。それも自民党議員たちの中枢を占めていることに愕然とさせられた。日本が女性蔑視の国と海外から言われても、これでは返す言葉もない。肝心の自民党員たちは屁の河童だろうけど… 彼らには日本をよくするよりも、裏金を積み重ねることのほうが大事なことに違いない。だから未だに家の因習に捕らわれて、夫婦別姓の運動も妨害する妄動を止めもしない。 2024/03/07
coolflat
17
24頁。79年6月、大平内閣は「家庭基盤の充実に関する対策要綱」を発表した。「日本型福祉社会」を掲げ、「責任と負担・自助・相互扶助」を強調し、福祉の担い手を国家よりも個人や家庭、地域等に想定するものだった。重点政策として、家庭教育の強化、「家庭の日」の設置等が掲げられていた。この政策は福祉切り捨てであり、「家庭は女が守るもの」という性別役割分業を助長した。家庭基盤充実政策は中曽根時代の臨時教育審議会にも受け継がれ、家庭教育支援法制定や憲法24条「改正」案などの現在の右派が目指す家庭関連政策の源流になった。2024/07/27