内容説明
日本独特の文化である学校の運動部活動の内実を解明するために、戦後から現在までの運動部活動の歴史をたどり、フィールドワークから運動部活動を支える教員や保護者の声も聞き取る。自由に楽しむスポーツと強制をともなう学校教育の緊張関係を“子どもの自主性”という視点から分析して、日本の運動部活動の特異性を浮き彫りにする。
目次
なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか
運動部活動を分析するための方法論
運動部活動研究の包括的レビュー
第1部 運動部活動の戦後
第2部 運動部活動の現在
スポーツと学校教育
著者等紹介
中澤篤史[ナカザワアツシ]
1979年、大阪府生まれ。東京大学教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修了、博士(教育学、東京大学)。一橋大学大学院社会学研究科専任講師。専攻は身体教育学・社会福祉学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamikin
4
生徒の自主性を育むために、教育とスポーツが結託して現れたのが我が国で特殊に見られる運動部活動である。教育という側面が見出されているからこそ、単なるレクリエーションとしてのスポーツにはならずにこれまで成立していた部活動は、近年、生徒と教師に加えて保護者というエージェントが加わりさらなる複雑さを見せている。実証研究豊富の博士論文がもとになった力作です2014/06/05
unamaster
2
引用文献が豊富で、論文的な構成。結論が少しわかりにくいものの、学校・教師と子供とその保護者の密接で複雑な関係性をうまく表していると思う。教育とは何かという明らかな答と共通見解がなく、それでいて教育への期待は相変わらず高い(特に保護者の信仰にも近い意識)。柔道の問題を重ね合わせて考えてみたが、「柔道は最初から教育を含んでいるもの」という<思い込み>から疑ってかからねばならないと思う。なぜなら教育の定義すら立場が違えばあやふやだし求められているものが違うのだから。柔道とは何か?まずそこを再定義する必要あり。2015/10/27
ソノダケン
1
本来学校に必要なく、教師への負担も異様に重い「部活動」は、矛盾だらけの不可解な存在だ。国の政策だけでなく、日教組も部活を消極的に支持してきた(=民主的なスポーツ教育を守る)と知り、大いに納得した。つまり戦後の象徴だね。2017/02/18
ぷほは
1
もともとは副指導教官の先生が学部生向けの放課後(笑)就学支援勉強会のために指定した文献だったが、自分が非常勤講師をするようになり、学校教育をテーマに授業する際の参照の一つとして通読。高かったが、それに見合う情報量だったと思う。ところで前述の勉強会では、中国からの留学生たちが日本のサブカルチャーに度々出てくる学校文化=制服や放課後の部活動に大きな憧れを持っていると告白してくれたことが印象的だった。自分などは本来文化系のくせにスクールカーストの上昇を目論みなんちゃって体育会系に入った未熟者(?)だったが。。。2015/06/19
katashin86
1
「子どもの自主性を適切に発揮させるために、学校という枠をはめ、教師が監督・指導する」部活動というスキームは、そもそもあちらを立てればこちらが立たず、という構造にある。 福祉国家的・パターナリスティックな「よりよく自由を行使するための介入」においてスポーツにいかなる位置づけがありうるのか、広くスポーツが社会においてもつ意味・機能についてさらに考えてみたい。2014/11/25