出版社内容情報
精神障害者の犯罪責任を免除する刑法39条。その起源を刑法史に探り、「理性的な人間像」と対立する「非‐人間としての精神障害者」という問題性を指摘する。責任能力を認めないのは精神障害犯罪者を「人間」と見なしていないと批判して、39条の廃止を訴える。
はじめに──私がキレた理由
第1章 日本の責任能力制度──「生物学的」方法と「心理学的」方法
1 「生物学的」方法は生物学的か
2 裁判所がいちばんエライ
3 ほとんどが起訴前鑑定で責任無能力とされる
4 心神喪失者等医療観察法をめぐって
5 「犯行」がなくて「犯行時」が存在するか
6 犯罪は「つくられる」ものだ
7 フッサール現象学の「方法的独我論」とは
8 「刑法学説」のムナシサ
第2章 狂人は自分の病気によってすでに十分罰せられている──近代以前の責任能力
1 犯罪も刑罰もなかった時代
2 なぜ「結果責任」だったのか
3 ゲルマン部族法・ザクセンシュピーゲル
4 カロリーナにおける「内面」の発見
5 狂気はあたりを歩きまわっていた
第3章 「自由意思─理性的人間像」の成立──重商主義の時代の責任能力
1 テレジアーナ・ヨセフィーナ・プロイセン一般ラント法
2 刑法における「自由意思─理性的人間像」の成立
3 刑罰と労働が結びつけられた
4 精神障害者の「大いなる閉じ込め」
5 社会と刑罰から排除された精神障害者
第4章 純化する「自由意思-理性的人間像」──自由主義の時代の責任能力
1 「自由意思─理性的人間像」を必要としたのはなぜか
2 カント=フォイエルバッハと「犯罪と刑罰の等価交換」
3 フォイエルバッハのバイエルン刑法典
4 ヘーゲルの「価値的応報刑論」とは
5 ヘーゲル学派と諸ラント法
6 英米法におけるマクノートン・ルール
7 著者としての「メタ自己」の発見
8 露出する近代的主体の限界点
第5章 「あいだ」としての精神病──「生物学的」方法批判
1 身体疾患を「要請」されてきた統合失調症
2 「あいだ」としての精神病
3 精神病はメタファである
4 サズのダラム・ルール批判
5 近代における「因果関係」論の成立
6 心身二元論の陥穽
7 ホントに精神病が「原因」といえるのか
第6章 フィクションとしての「他行為可能性」──「心理学的」方法批判
1 責任非難の根底にある「他行為可能性」
2 日本には個人も意思決定も存在しない
3 フィクションとしての「他行為可能性」
4 「心理学的」要件は「内面」に存在するか
5 「心理学的」方法と精神異常抗弁廃棄論
6 責任能力論とメンス・レア
7 刑法三九条の廃止に向けて
第7章 日本の責任能力をめぐる判例──「了解可能性」という方法
1 日本には社会も権利も存在しない
2 「ゆるし」としての起訴便宜主義
3 「混合的」方法はタテマエにすぎない
4 心神喪失で無罪が認められたケース
5 完全責任能力となったケース①
6 完全責任能力となったケース②
7 判例は「世間」の狂気観を反映する
8 心神耗弱で減刑が認められたケース
第8章 「あいだ」と「ゆるし」の責任能力論──刑法三九条廃止のあとにくるもの
1 「了解可能性」という方法のインチキさ
2 刑法三九条廃止のあとにくるもの
3 「意思」概念の垂直的拡張
4 「意思」概念の水平的拡張
5 「世間」における「あいだ」と「ゆるし」
6 「あいだ」と「ゆるし」の責任能力論
おわりに──オトシマエとしての
内容説明
「精神障害者」の犯罪責任を免除する刑法39条。その起源を刑法史にさぐり、「理性的な人間像」と対立する「非―人間としての精神障害者」という論点を浮き彫りにする。精神鑑定が情状酌量の手段でしかない現状もふまえ、責任能力を認めないのは「精神障害者」を「人間」と見なしていないと鋭く批判し、刑法39条の廃止を主張する。
目次
第1章 日本の責任能力制度―「生物学的」方法と「心理学的」方法
第2章 狂人は自分の病気によってすでに十分罰せられている―近代以前の責任能力
第3章 「自由意思‐理性的人間像」の成立―重商主義の時代の責任能力
第4章 鈍化する「自由意思‐理性的人間像」―自由主義の時代の責任能力
第5章 「あいだ」としての精神病―「生物学的」方法批判
第6章 フィクションとしての「他行為可能性」―「心理学的」方法批判
第7章 日本の責任能力をめぐる判例―「了解可能性」という方法
第8章 「あいだ」と「ゆるし」の責任能力論―刑法三九条廃止のあとにくるもの
著者等紹介
佐藤直樹[サトウナオキ]
1951年、仙台市生まれ。九州大学大学院修了。九州工業大学情報工学部教員。専攻は刑事法学、現象学、世間学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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