内容説明
財界人であるとともに民俗学者としても名高い渋沢と、民家研究・考現学の創始者である今。戦前期に二人は、日本の生活や民俗を収集・展示して新たな価値観を発信する博物館の設立をめざして奔走する。その活動は戦後、国公立の博物館設立として結実した。のちに知の巨人として評価される二人が若き日に目指した夢とその道のりを、豊富な資料から浮かび上がらせる。
目次
第1章 民俗博物館とは何か(名もなき人たちへのまなざし;誕生とその背景;民俗博物館への旅)
第2章 民具と民家の思想(常民の博物館の誕生と形成;民藝との距離;美をめぐって)
第3章 青年団運動と民俗博物館―大日本聯合青年団郷土資料陳列所(青年と郷土研究;民家の展示と郷土)
第4章 紀元二千六百年と民俗博物館―日本民族博物館(国際文化振興としての博物館;計画の内容と推移)
著者等紹介
丸山泰明[マルヤマヤスアキ]
1975年、新潟県生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。専攻は民俗学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
17
敬三は生物採集と標本づくりに興味があったが、実業の道へと進むことを祖父栄一氏によって導かれた(25頁)。いわゆる、家の事情ということで、先天的な資質を活かすことができないのか、という疑問が生じる。妥協策が民俗学であったようだ(26頁)。人生は判断を迫られる場面で適切に判断できるかどうか、必ずしも的確にいくとは限らない。民俗博物館とは、ナショナリズムの高まりを背景に、生活文化を保存、公開し、アイデンティティーを教化するための政治的装置(40頁)。民衆からすると政治に利用されるのはたまらない。2014/03/08
takao
3
フィンランド、スウェーデンの野外博物館を日本にも作ろうとした。民藝運動は、単なる鑑賞にすぎないとして、距離を置いた。2017/12/06
onepei
1
「民俗博物館」前史がまとめられていて興味深かった。今和次郎の考現学、民家研究以外の仕事をはじめて知った。2014/01/21
ekura
0
民俗学史or博物館行政史好きにはおすすめ!2014/01/07
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