出版社内容情報
中国最初の『共産党宣言』(1920年)の主たる翻訳底本は『社会主義研究』(1906 年)に収録された幸徳秋水・堺利彦訳であり、郭沫若版『ドイツ・イデオロギー』の翻訳底本は,櫛田民蔵・森戸辰男による『我等叢書』(1930年)であったと考えられる。中国最初の『資本論』は、河上肇・宮川實訳(1927年)を事実上の翻訳底本としており、日本語から多くの術語が受け継がれた。
大正デモクラシーの時代に相次ぎ刊行されたマルクス・エンゲルスやレーニンらの左翼文献の日本語訳が、中国人留学生や亡命者によって中国語に翻訳すなわち漢訳され普及した事例が相当数存在した。
他方、現代では同一のドイツ語表記が中国と日本で全く異なる漢字表記になっている事例が相当数存在する。原語に全く異なる術語が用いられるようになったのは1960 年代以降のことという。著者はNation を「国民」から「民族」に訳し変えたことは、中日両国研究者の研究交流を阻害する要因になる可能性があると指摘する。
翻訳術語の相違はテキスト間の相違となり、それが理解の核心部分を構成するものであればあるほど、中日両国で全く異なるマルクス・エンゲルスの理解が生まれることを著者は危惧する。
両国研究者の意思疎通や研究交流の深化拡充のためにも、両国におけるマルクス・エンゲルス著作の翻訳史、および翻訳術語の変遷史を体系的、網羅的に検討することの重要性を訴える。
本書は博士学位論文(東北大学2016年)に結実した、著者・盛福剛の研究成果を公刊したものである。
【目次】
まえがき
第一部 民国以前社会科学文献の伝播
第1章 清朝政府「洋務運動」前後社会科学文献の翻訳
第2章 日本留学風潮と留日学生の社会主義思想の受容
第二部 民国時代マルクス・エンゲルス文献の翻訳普及史
第3章 中日両国における『ドイツ・イデオロギー』普及史の起点
第4章 陳啓修による『資本論』初訳(1930)と翻訳術語の継承
第5章 郭大力・王亜南による『資本論』全訳(1938)の成立過程
第6章 建国後『資本論』の翻訳
あとがき
参照文献一覧
附表1翻訳=漢語表記比較表
附表2陳訳述語比較表
附表3『資本論』第1 巻 独・日・中述語比較表
附録『建国前中国マルクス・エンゲルス文献の出版目録』
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