内容説明
一九七〇年代にはじまった“演劇革命”の時代状況のなかで、つかこうへいは登場した。六二歳の若さで逝去したこの劇作家の戯曲・舞台・小説は、わたしたちに何を手渡そうとしたのか。新しい演劇状況を生み出した稀有な劇作家の世界をひもとく現代演劇史研究の集大成。
目次
序論 消された“知”―既存概念への叛逆
第1部 戦争・革命へ向ける“或る悪意”(「演技人間」の登場―「郵便屋さん、ちょっと」から「戦争で死ねなかったお父さんのために」へ;“カーニバル”としての全共闘闘争―『飛龍伝 神林美智子の生涯』と“天皇制”)
第2部 “もどき”としての作品たち(つか版「父帰る」の問題性―「出発」論;演出家のある視点―「出発」の作劇術;戦略家つかの“「講談」語り”で囲ったゴドー版―『松ヶ浦 ゴドー戒』;第二世代の“生きのび方”―「巷談松ヶ浦ゴドー戒」におけるパロディと大衆性;『熱海殺人事件』という事件―分をわきまえる身体から溢れる真情;「定本 熱海殺人事件」論―きめる…虚構の演劇;シナリオ「つか版・忠臣蔵」―「滅私」型の自己表出)
第3部 “つか版”青春―二人の男と一人の女(『ストリッパー物語』の七〇年代―つかこうへいドラマの転換点;“内面の言葉”が生み出したドラマ―小説「蒲田行進曲」;インテリ映画青年ヤスの“階段落ち”―自立の物語としての『蒲田行進曲』;ドラマトゥルギーを超えた物語を求めて―「リング リング リング 女史プロレス純情物語」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
西
20
読んでるだけで、やはりつかさんの演劇を観たくなる。リアルタイムで観られた人は幸せだなと。色んな人が同じ芝居を観てどう感じているかを読むだけでも、その芝居の魅力が伝わってくるし、またところどころに出てくる抜粋されたセリフだけでも、惹きつけられる。「戦争で死ねなかったお父さんのために」「飛龍伝」「出発」「松ヶ浦ゴトー戒」「ストリッパー物語」はまだ観たことがないので観てみたいし、熱海・鎌田・広島は何度でも観たい2020/04/18
Masakazu Fujino
8
日本近代演劇史研究会のメンバー14名による論文集。つかこうへいのの作品をそれぞれ取り上げて、それぞれの視点・観点で論じている。つかこうへいの芝居を観てきた者として懐かしくもあり、またそうかあ⁈と思うところもありの本であった。89年に組合の講演会の講師につかこうへい氏を呼んで、司会をしたことを懐かしく思い出した。(ちょうどPARCO劇場で「幕末純情伝 黄金マイクの謎」を上演する直前で主演の平栗あつみをともなってきたことを、懐かしく思い出した。亡くなって10年になるのか。しかし校正がひどいのが気になった。2020/04/27
渋谷英男
0
つかこうへい自身はこの本の様なことは考えてなかったんじゃないか。☆2.52020/07/21
ねこはひるね
0
劇作家つかこうへいとその作品についての論文集。演劇研究の専門家たちが様々な資料や記憶から「つか芝居」を学術的に論考する。はじめて「熱海殺人事件」を観たときの衝撃と青春の1ページを懐かしく思い出しつ読了。彼の作品はほとんどの作品で設定が破綻しているし、女性蔑視も甚だしい台詞は早口でもう何を喋っているのかもよくわからないような芝居であったが、紛れもなく昭和の、あの「時代」を象徴する文化であったと思う。書籍なのに…あまりにも誤字が多すぎるのは残念。しっかり校正してください。 2019/04/11
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