内容説明
この国の近代演劇の扉を開けた川上音二郎と貞奴の身体表現は、日本の新しい時代にマッチした。彼らの演劇は“明治”に生れた人々(民衆)を魅了しただけではなく、アメリカやヨーロッパの人々にも型破りな新鮮な表現として受け入れられた。日本の貞奴は世界のスターになる。彼らの新しさに気づいた権力者たちは、アジアの小国日本を“文化国家日本”として世界に認めさせるため宣伝に利用する。彼らの人気に日本国家は便乗したのだ。そして劇場改革・演劇改革が始まり、“演劇の前近代”が遠のいていく…
目次
第1章 世界巡演を振りかえる―明治政府のプロパガンダとしての身体・表象(政談から芝居へ;為政者と川上―期待される演劇人 ほか)
第2章 正劇「オセロ」の上演(「影響の不安」―近代人川上の先駆性;シェイクスピアの「オセロー」 ほか)
第3章 シェイクスピア作品とお伽芝居(東京市養育院慈善演劇―「江戸城明渡」「マーチャンドオブヴェニス」;初めてのお伽芝居(一九〇三年一〇月)―「狐の裁判」「浮かれ胡弓」 ほか)
第4章 俳優養成・帝国劇場・大阪帝國座(音二郎と明治の財閥;帝国劇場建設計画―女優養成と「モンナワンナ」 ほか)
第5章 大阪帝國座開場(韓国英太子の台覧―西園寺首相官邸大夜會;新派大合同「ボンドマン」 ほか)
著者等紹介
井上理恵[イノウエヨシエ]
近現代演劇専攻。東京生れ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。桐朋学園芸術短期大学特任教授。単著:『久保栄の世界』『近代演劇の扉をあける』(第32回日本演劇学会河竹賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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