内容説明
アメリカ大陸を横断し、ヨーロッパの主要都市を巡演する、川上一座の破天荒な、しかし洒落たアヴァンギャルドな新演劇。三〇代の川上音二郎と貞奴、そして一座の人びとは日本近代社会“明治”という時代に生きる“現代の言葉と身体”を、世界の同時代人たちに見せてきたのである。国家権力の近くにいて、世界で“遅れて来た日本国”の役に立ちながら、権力に頼ることもせず、利用もせず、同業者からの攻撃の矢を一身に受けながらも自身の理想を求めて歩んだ音二郎と貞奴。内外の新資料を駆使して、彼らのさまざまな演劇的冒険と創造の全容を明らかにする本書は、日本近代演劇史研究の画期をひらく。
目次
第1章 アメリカ大陸横断 一八九九年(日本からハワイへ Hawaii;サンフランシスコ San Francisco;シアトル・タコマ・ポートランド Seattle・Tacoma・Portland―「藝者と武士」の誕生;シカゴ Chicago―興行師と出会う;ボストン Boston―成功;ワシントン Washington―日本公使館夜會;ニューヨーク NEW YORK)
第2章 ヨーロッパ 一九〇〇年(ロンドン到着 London;「空前の記念 絶後の名誉」;パリ万国博覧会への誘い―ロイ・フラー;パリ万国博覧会で開演 Exposition Universelle de Pari)
第3章 帰国そして再渡欧 一九〇一年~〇二年(川上一座海外巡演の“総括”;再訪 ロンドン 一九〇一年;パリ再訪;ドイツ―中・東欧諸国巡演;巡演の終わり―帰国へ)
著者等紹介
井上理恵[イノウエヨシエ]
近現代演劇専攻。東京生れ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。桐朋学園芸術短期大学特任教授。著書に『近代演劇の扉をあける』(第32回日本演劇学会河竹賞受賞)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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