内容説明
流鏑馬―疾走する馬上から矢を放つこの技芸は、武芸であり、同時に神事でもあり、日本史において特異な位置を占めてきた。本書は、その源流たる古代の「薬猟」前史から、鎌倉幕府の最重要儀礼へと至る過程を、史料に基づいて精緻に解き明かす。中世に数多く存在した儀礼のなかで、なぜ流鏑馬こそが武家文化を象徴する儀礼へと昇りつめ、そして急速に姿を消したのか。その背景を探ることで、中世武家政権のアイデンティティと世界観が鮮やかに浮かび上がる。流鏑馬史上初の総合的考察によって、中世儀礼研究に新機軸を打ち立てる。
目次
古代日本の端午節騎射の成立と薬猟―五月五日に騎射する意義の東アジア的源流
古代国家における端午節(五月五日節)騎射・貢馬行事の確立
五月節(端午節)騎射の廃絶と小五月の成立・変容・廃絶
京都における流鏑馬行事の成立とその要因―摂関家騎射・競馬と永長の大田楽
「ヤブサメ」「流鏑馬」の語源と考案者―東国方言と紀伝儒
流鏑馬の恒例神事化と治天の祭礼―京郊・諸国神社への伝播経路
鎌倉幕府流鏑馬研究の論点整理―”現代版中華思想”の克服
鎌倉幕府の基礎アイデンティティ―終わりなき戦時を生きる勇士の軍営
鎌倉幕府の対外アイデンティティ―唯一の国土警衛機関
源頼朝の弓馬故実整備と鎌倉幕府の流鏑馬―建久五年検討会の再検討
軍神接待としての流鏑馬―勇士たる基礎アイデンティティの維持行為
鎌倉幕府における流鏑馬役の諸相と流鏑馬の衰退
執権北条時頼による鎌倉幕府アイデンティティ再構築―流鏑馬・武芸奨励と《礼》
南北朝・室町期の流鏑馬役と諸国諸社―守護所が賦課する公方役
幕府流鏑馬行事の廃絶―守護神転換・秘事口伝化・戦国
江戸幕府における流鏑馬の”復元”と”伝統”の創作―小笠原家・赤沢家の系譜事蹟の虚実
著者等紹介
桃崎有一郎[モモサキユウイチロウ]
1978年生。慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻後期博士課程単位取得退学、博士(史学)、武蔵大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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