内容説明
日本の山岳界でひんぱんに使われる「近代登山」という言葉。「近代登山の父とされるW・ウェストンから、日本の登山は始まった」という風潮に忸怩たる思いを抱えてきた山岳ジャーナリストの著者が、人類の出現以来繰り返されてきた登山と山岳の歴史を今、“地元目線”で掘り起こす―。
目次
第1章 信州教育の傑作、学校登山
第2章 山街道・乗越・湯道
第3章 開山伝承 未解の二題
第4章 「山」の虚像を演出した2人
第5章 山の実業家
第6章 山の概得権、入会と水利
第7章 山人評伝
第8章 山学彩々
著者等紹介
菊地俊朗[キクチトシロウ]
1935年東京生まれ。早稲田大学卒業後信濃毎日新聞社入社。64年ヒマラヤ遠征報道で日本新聞協会賞受賞。常務・松本本社代表を最後に退職。現在山岳ジャーナリスト。日本山岳会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
14
信州の学校登山発祥地は伊那谷と大町周辺(15頁)。そこに木曽駒ヶ岳や燕岳があるから? そこに北アルプスがあるからだろうか。三澤勝衛のように、能勢栄(1852~92)は、身近な事物現象の実験、観察を通じて、自然の理法を学ぶ理科教育を推進したという(24頁)。自然に学べ、実践的に学べ、現場主義ということか。大町西高、神坂中、深志高の生徒らが滑落や落雷で亡くなっている学校登山(28頁~)。小島烏水(1873~1948)が出てくる。日本考古学の父、ウィリアム・ガウランド(112頁)。 2014/10/16
roatsu
9
登山史においていかに根拠なき通説等が幅を利かせているかを知り、安易な思い込みを戒められた。日本人一般にありがち(と個人的に思う)な権威に弱く、安直なキーワードや声高なだけの主張に雰囲気でひきずられて同調し、たちまち知った風な口をきき始めるという特徴が山岳史の分野でも発揮されているのだろうか。メディアや口伝で定説化されていることも丹念に史実史料を検証すれば全く違う実相が明らかになるのは登山史に限らない。信州教育の特色たる学校登山の歩みや、山人評伝、入会権問題など読み応えある逸話が多く勉強になる一冊。2015/10/07
yoneyama
1
学校登山の歴史、播隆上人の登山、修験道などについて、ようやく興味深く読む歳になった。信州の事情が、よくまとめられている。文明開化、近代アルピニズムということばはそれ以前を蒙昧な時代と考えたかった明治思想だったのかもしれない。宗教的であるということを、何か異様なものとしか考えない発想は、現代日本特有の思潮かもしれない。古代以来長期間、信仰は空気のようなものであった。2018/11/17
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