内容説明
上原良司没後60年。戦火に散った青春、穂高出身の若き学徒兵22歳特攻隊員の遺書。
目次
写真に見る上原良司の歩み
上原良司の手記(上原良司)(『きけわだつみのこえ』遺書と所感;文集―他人見るべからず集;朝日日記 ほか)
上原良司とその時代(中島博昭)(上原の遺書のもつ先進性;その思想形成のルーツを探る;三つの遺書のからくり;第一の遺書と学徒出陣;第二の遺書と軍隊生活;最後の遺書と特攻隊員)
対談・上原良司さんとわたし(神村みえ子)
著者等紹介
上原良司[ウエハラリョウジ]
1922年9月27日長野県北安曇郡池田町に生まれ南安曇郡穂高町有明耳塚で育つ。松本中学校から慶応義塾大学予科を経て本科経済学部へ進学。1943年12月学徒出陣で松本第50連隊に入隊・第2期特別操縦見習士官。1945年5月11日陸軍特別攻撃隊第56振武隊員として沖縄嘉手納湾上の米海軍機動部隊に突入戦死、22歳、陸軍少尉
中島博昭[ナカジマヒロアキ]
1934年、長野県南安曇郡穂高町に生まれる。地域史研究家、安曇野塾運営委員。長年、松本深志高校など県内の高校社会科教師や長野県短期大学講師を務めるかたわら、郷土の優れた人物や文化財の掘りおこしと顕彰、地域づくりに尽力してきた
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感想・レビュー
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ひらけん
7
彼の手記には戦争に対する憤りや怒り、特攻隊の非人間性を激しく批判していたのに、何故その特攻隊で命を散らしたのか。想いを寄せた大好きな人への届く事のない遺本に残した恋文。特攻前の最後の帰省の時、今生の別れになる家族に大きな声で叫んだ3回の「さよなら」。出撃前夜に書かれた「所感」と題した手記は涙なしでは読めなかった。彼が友人に話した「死地に赴くのに喜んで志願する者は1人だっていない。泣く泣く手を挙げているのが本当の気持ちさ」この言葉が偽らない真実やろな。否応なしに戦争に駆り出された彼の心の叫びに胸を打ちました2017/01/13
雨猫
6
以前から、特攻隊員はお国のため天皇のためと心底思って死んでいったのか?そんなことはあるまい、と思っていた。誰だって命や家族や恋人への執着がある。上原良司は極めて冷静に自分を分析していた。国家主義と自由主義、自由への渇望、愛する人への想い。昭和19年に彼は「自由は人間性なるが故に自由主義国家軍の勝利は明白。日本は思想的に既に破れている」と書いている。軍隊生活での不合理にも不満を抱いていた。愛読書に隠された初恋の人きょうこちゃんへの恋文には涙が止まらない。☆5つ2014/05/08
おたま
3
この本は、人の愛する事のすばらしさと責任を教えてくれます。2010/02/04
tecchan
1
40年近く前発刊。「明日は自由主義が一人この世から去っていきます。」と綴った出撃前の遺書はあまりにも有名。特攻隊員上原良司氏の残された日記,手記、遺書などでその生涯を紹介した慟哭の書。2023/12/15
かみつれ
1
クローチェ…、の響きの中に上原良司の知性と恋心が感じられて胸がいたい。2人の女性の間でゆれる青年としての自然な内面とともに、戦争という不条理の中で苦悩した、聡明な理性・精神も伝わってくる。初恋の人を追うように特攻で昇天した彼が、後世の日本人へ残した強いメッセージは鋭く、また重い。2019/05/05