内容説明
庶民の視線で「戦争」を記録した陸軍静岡連隊付き写真師柳田芙美緒。だが、その真骨頂はカメラよりペンにあった。スタジオに眠っていた貴重な未発表原稿などを収録。
目次
思い出の静岡三十四連隊
ジャワ上陸記
捕虜
帰還前後
南京支店開店記
そば、まんだん。小野庵、深大寺、安田家のこと。
十二月八日の私
八月のものがたり―せみ
般若湯
終戦記念日
敬愛する人
日本のいちばん長い日
二本松始末記
静岡県の陛下を追って
護国神社
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クラムボン
17
静岡連隊に同行したカメラマンがいた。彼は軍人でも無ければ報道関係でも無い。静岡に写真店を構える市井の人だ。昭和10年34連隊と共に北満、中支を転戦、その後新設230連隊に属し南寧、香港、ジャワ、スマトラに進駐するが昭和17年8月帰還命令。隊はガダルカナルで全滅する。空襲で焼失したはずのフィルムが自宅防空壕で見つかり復元に全精力を傾けた。そして昭和37年に「静岡連隊写真集」を刊行する。復元作業をきっかけに従軍当時のことを執筆。親族の協力を得て静岡新聞社が編集、文章も著者本人も個性的。写真集はこれから見たい。2021/11/16
にしの
6
静岡の郷土連隊、歩兵第二三〇連隊の従軍カメラマン柳田芙美緒の写真を通じた戦争。著者が遺したメモや投書などを集めた新書。この部隊は香港作戦や蘭印作戦で素晴らしい戦果を挙げるも、ガダルカナル島でほぼ全滅に近い状態になった。カメラマンはガダルカナルには同行しなかったから、蘭印作戦勝利の中での部隊との別れが今生の別れとなった。部隊の日常は朗らかながらも、戦場では一瞬にして屍となる悲哀がその先にある。2019/11/23
CTC
4
静岡には日露戦の軍神として名高い橘中佐の34連隊以外に、230連隊、118連隊、独歩13連隊などが編成された。本書はこれら静岡連隊の従軍カメラマンだった柳田芙美緒の遺稿を静岡新聞社が纏めたもの。柳田は34連隊と230連隊に従軍した際の事を描いている。因みに118連隊はサイパン、独歩13連隊はフィリピンで全滅。そして230連隊はガ島の三陣として一木支隊、川口支隊に次いで投入され全滅している。改めて二千数百を擁する連隊が全滅した時の郷土の様というのは、悲劇以外の何物でもない。日本中に同種の悲しみがあった訳だ。2015/01/12
tecchan
2
著者は、陸軍静岡連隊付きのカメラマン。庶民の視線で戦争従軍中から戦後にかけ多くの貴重な写真を残した。戦後に書かれた原稿をまとめた本書からは、戦争の生々しい姿、静岡の当時の姿がまざまざと目に浮かぶ。2021/09/04
naftan
2
従軍記は230連隊が中心。スマトラで連隊ほぼ全員の写真を撮り内地へ帰還。静岡で写真展を開いた頃、連隊は餓島で壊滅していた。2009/08/04