内容説明
運動を秩序づけるために選び取られた三つのフォルム。造形もまた途上の動線であり発語の自由と絡み合い、危うく膨らむ交差の痕跡、それだけが残される。
目次
重奏の夜の陰影
暗く明るい船出としての
いとなむことの修辞として
片翼だけの湿度の行方
曝されているものの輝きへ
夏の夢の行き先の
吸いこまれて抗って
濃密な声のもとで
密接であってなくて
淡くひろがる砂の熱〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅西マサ
1
私が本を開き文字を追う時に浮かぶ心象や動悸は、私だけが感じる輪郭なのか。私は詩を読む時にはいつもバトンを渡された心持ちになる。詩人がみたものを後方から覗き視線を重ねる感覚に傲慢にも陥っていたのが、「多重露光」の差違のひとつの変奏のの 行間の火は消えて 破綻のほうがむずかしいや、なやましい灯りの経路をの並み 幻のように思えるから並み ひるがえればこちらも幻で 読んだ瞬間に。私が渡されたのはバトンではなかった。そのバトンの先の差しだしてくれた腕を持つ詩人の眼差し。私が本を開き文字を追う時にみたものは光だった2020/12/31