出版社内容情報
さきの世で繋がる人たちはとうに立ち去った
とても遠い呼び声を
ずっと聞いていたような気がする
(「銘度利加」)
この土地を行き交う者たちの気配を、胎内に響かせ、鎮める、聖なるうた声。待望の第1詩集。
十田撓子[トダトウコ]
著・文・その他
内容説明
この土地を行き交う者たちの気配を、胎内に響かせ、鎮める、聖なるうた声。第一詩集。
目次
1(銘度利加;赤い花;殯;青の断想)
2(入口に鍵のない扉をもつのは船)
3(パニヒダ;或る聖所へと向かわなければならないときに;塔があった;第二地帯の入口;グルス!グルス!Grus Grus;鉱山町;港町;晴雨計商人)
4(パスハの夜;晩冬;古歌 Paslm;それでもまだ転轍機は動いているとするなら;誰も思い出さなかった馬を)
著者等紹介
十田撓子[トダトウコ]
1976年秋田県鹿角市生まれ。東京女子大学文理学部卒(哲学科)。詩誌「密造者」同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いやしの本棚
11
エミリ・ディキンスンは言った、「成功をもっとも心地よく思うのは/成功することのけっしてない人たち」と。歴史はいつも勝者によって書き残され「敗れた兵士」が見た景色を後世の人間が知る機会は少ない。けれど知らないのは、教えてもらえなかったからではない。知ろうとしなかったからだ。『銘度利加』は、日本の歴史において敗者とされ、なかったことにされた人々の墓穴である。穴に首をさしいれた読者は、「銘度利加に記された名」さえ「受け継がれなかった」死者たちを、自分で「酸っぱい汁に沈め」た人の顔として、目の当たり見る事になる。2018/02/28
mer
9
淡々と時間は過ぎていき、死ぬのは呆気ない。読みながら海に沈められるような気分。2021/01/22
ふるい
7
仄暗いさきの世から、かすかな光が我々のほうに差し込む。既に生きた記憶を生きるわたしの祈り。さびしさとわずかな希望が胸に残る、不思議な詩だった。2018/04/15
ふう
4
2018年H氏賞受賞作。受賞時、Amazonに注文を試みたのだが、在庫がなくて買えなかった詩集。やっと手にすることができたが、今度は、なかなか読めない。難解で手強い詩集。2019/01/18
yumicomachi
3
この詩集の黒い表紙は、深い深い深い水の色だ。それは忘れられようとしている遠いちちははのための祈りの水、ふるくて新しい受洗の水で、昏い北の地を流れる歴史の水脈だ。ときおり水底からひかりがさして、生きていく者らをも照らす2018/03/09