内容説明
生命への問いにふるえる詩人の声が、この宇宙に、この地球に、雪のように降りそそぐ。退化した翼を祈りの形に、日常と非日常をこえイヴの記憶へ―。辿りついた小さな生誕の時刻。
目次
この惑星(ほし)が熟して落ちて朽ち果てる前に
ひとのかたちに複製されて
滅びゆくものたちへの鎮魂歌(れくいえむ)
祈りのかたちに合わせたままで
一瞬の奇跡にすぎないという意味で
夜が明けるとクジラは死んでいた
時間の闇から掬いあげて
この耳を濡らす声たちが
ユーラシア大陸に落ちた夕陽の
携帯電話は離散した民族を繋ぎ
モネの睡蓮が池を覆い尽くす前に
食べ残された樹皮の記憶は
翼ある命たちのために
家具のない空間で年月が軋んで
皆既帯を航行する船から
バースデーケーキは母系遺伝の仮説
声の記憶を辿りながら