内容説明
波が削り取っていった離れ島、地図には記されない土地の名。揺れる光の先にある、わたしのような―。不安定な生のかたちを見つめる言葉に、清冽な抒情といのちのにおいが立ち込める。
目次
サイゴノ空
半島
指先に触れるつめたい皺
給水所
舟に乗る
ドライヴ
春雷
通り雨
月曜の朝のプールでは
夏の獣
墜落の途上で
夜の果てまで
2007.11.17 池袋13:06
席
幻の馬
午後の突起
おかえり
世界の雫
水のさき ゆびの先
半島の地図
留守
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふくしんづけ
9
自らの肉体の不在の部分を、あるいは、喪失した肉体のその先を、外界のあらゆる姿、音、匂い、気配に委ねていくような詩の集まり。ぱっと見、散文的すぎるかと思うも、ひとつひとつの言葉を追い始めればその魔術に囚われる。〈わたしのなかを流れていたいろいろなものが〉〈外に出てしまって流れているみたい〉〈そうじゃないここは川辺だ〉『サイゴノ空』〈水島〉〈というそこは昔は半島に連なっていた土地〉〈離れ島〉〈わたしのからだのなかにいつもある わたしから離れていこうとするものを そんな名で呼んでみようか〉『半島』2021/12/09
桜井夕也
1
「そんなふうに/とつぜん現れた世界の果てに巻き込まれてしまうことだって/あるかもしれない今この瞬間のわたしの足元に/大きな滝が出現してわたしの世界の果てとなったとしても/おかしくはない」(「2007.11.17 池袋13:06」)たとえば、いまここにいる床がぱっと消えてしまうことがあるかもしれない、ないとは言い切れないのではないか。そんなことを昔哲学の講義で聞いたが、この詩集を読みながら、そうした世界の謎のようなものを考えていた。もちろん、エロチックな詩もとても好きです。2014/07/09