内容説明
セラフィタと名乗る男と私の妄想の都市に上る欲情の月。藤原龍一郎の短歌と交錯しつつ紡ぎだす派遣OLの愛と性の不条理。
著者等紹介
柴田千晶[シバタチアキ]
1960年横須賀生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ndj.
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安い性愛。薄い幻想。こんなものに頼らねばならぬほど、わたしたちはからからに乾いているのか。「虚無の穴いくつもありて快楽の穴にも虚無が充填される」からみつくように差し挟まれる短歌。(キットアナタハ今以上、モット孤独ニモット独リニナレルデショウ)。このからからに乾いた質感と、はしたない欲情とが危ういバランスを保ちながらセラフィタ氏とのやりとりはすすむ。それはいいのだけれど、収斂していく最後の叫びがあまりにも凡庸で、ああ、これが現実か、と、わたしたちの救済はそこにしかないのか、と、溜め息をついた。2009/01/17