内容説明
未知なる発見物を求めて、言葉が街路にさまよい出てゆく。幻想と実在の境を歩くように西欧の地誌のなかを歩く遊歩者の知覚を通して、独異な修辞法で描かれた詩的散文の傑作。シュルレアリスムの「最後の果実」と世評高い、ジュリアン・グラックが描くポエム・ロマネスクの改訳新装版。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
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「いまや世界は雨に抱きこまれている…草のにおいのする緑の寝間から流れ出て、滴をちらばめたカーテンを蔓草の紐でつるす。ぱちぱちと音のする水晶の数え玉の算術だ(驟雨)」端整な古典美を貫いた『シルトの岸辺』や『アルゴールの城にて』での孤高の作家グラックとは異なる、シュルレアリスムの詩人としての若き詩作。「水のきらめきと十時の倦怠を前に、青ざめた光の下で、街に近い芝生に横たわった若い美女の目覚め。歴史も古いこの街の、小鐘楼や尖塔…(ハンザ同盟諸都市)」後の『シルトの岸辺』への萌芽というか、いわゆるイメージボード?2017/08/19
龍國竣/リュウゴク
0
「氏の訳文は、グラックを卒論に選んだ人だけに、また自らも実験的な詩を書く人だけに、日本語としてもよく練れた、みごとな出来栄えを示している」と澁澤龍彦に称賛された天沢退二郎の訳。素朴な中に光るものを発見する喜びを感じさせてくれる「ぼく」の詩的な散文集。2014/05/02
なつめ
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「すべての原形質である海は、審判者でありまた、裁かれる者」---シューレアリズム的な独特の比喩が素敵。2011/05/09