内容説明
ツァラとはだれか。ダダとはなにか。生から詩へ、詩から生へ。高度なメタフィジックを基盤に、ダダ、シュルレアリスムという枠を超えて固有の詩世界を創造したトリスタン・ツァラ。純粋なる「夢=詩=生」の振動を追求しつづけた詩人の軌跡を跡づけ、精緻な分析を試みる著者渾身のライフワーク。
目次
序章 特異な詩人
第1章 現実世界から想像世界へ
第2章 ダダの空間
第3章 『近似的人間』の詩学
第4章 幻想世界
終章 ツァラの笑い―結びにかえて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月
7
詩は精神活動であるとツァラはいう。詩はあらゆる導かれた思考の枠を超えたあらゆる合理的論理的思考形態を逸脱した人間の意識の深層部で流動する心的活動の直接の表示であると。この意味で詩は夢と類似する。詩と夢とは同一のそして唯一の表示の二つの鋳型といえる。詩もまた夢と同様に人間精神の内奥に潜む非合理の残骸を発現体とする。詩は昼間の合理的論理的思考展開と対立し、常にその枠組みから溢れだし、その枠組みを破壊する方向で機能する。ロジック(論理)とリリック(詩)とは相互背反的性質を持つものである。2018/01/21
りょう@りんご売り
3
ツァラといえばダダイズムの指導者としてしか知らなかったが、「詩は生である」として詩を精神活動と捉え、現代社会によって無意識下に抑圧されたわれわれの欲望を言語に現すという仕方で、詩と社会変革とを結びつけ詩を革命の理論に組み込んだシュルレアリスム期の彼の思想は、現代にも通用するもののように思われ、とてもよい刺激になった。2019/04/18
s_i
0
フーム2012/09/29