感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっち
27
著者が言葉に興味を呼び起こされるのは、言葉の重層性に立ち会うときだと言う。使い慣れた言葉の一つの意味が、ぐらついて、一つの意味だけでは収拾がつかなくなってしまうとき。例えば、崖っぷちで「即死場所」と書かれた看板を見たとき、著者は「即、死場所」と読むそう。危険な崖の上に限らず、人間はどこにいても、そこが死場所でありうるという意味で。「即死場所」と書かれた看板という事実は変わらない。変わるのは事実の受け取る感性。作家や詩人は、感性に長けているか、その人なりの特徴があるのだろう。感性を言葉で表現する技術も必須。2022/08/12
玖良やまだ
26
この本を通じて、僕の日常がいかに詩的感性からかけ離れていたか痛感した。著者によれば、日常の何気ないモノやコトに詩が潜んでいるということ。僕は今まで雑に行き過ぎていた。もっと丁寧に時空を過ごすことにした。 2020/05/04
yumicomachi
5
Ⅲ部からなる。I〈詩と言葉の通路〉は、詩を産みだす言葉をめぐる考察的エッセイ。II〈自作について〉は「I was born」「夕焼け」など著者による詩作の背景を解き明かす。Ⅲは詩人論。石川啄木、高村光太郎、中原中也、立原道造、高見順。1980年12月に刊行された『詩への通路』を新編集して2005年1月に刊行したもの。わかりやすい語り口で、詩について、言葉について、詩人について深く考察されており、楽しく真剣な思索へ導かれた。2019/04/06
天婦羅★三杯酢
3
「I was born」「夕焼け」の作者、吉野弘による、「詩とは何か」「詩作の方法/考え」のエッセイ集。既読のものもまああったが、自作の詩を語る中に、誇りたがるものをもっていることを隠さなかったのは新味。また、「職業詩人」として、時にPR誌などから寄稿を求められる時、相手の欲しいものは実は「コマーシャル」や「プロパガンダ」もある、けれど、それに乗じて一面性を強調した安易なものを書かず、テーマや印象はそらさぬまま、人間を矛盾の総体としてとらえたものとして詩を提供する事も書かれている。2017/06/03
Mayumi Maruyama
3
そうだった。こういうことばを味わう解釈論が好きだったんだ。2016/03/01