内容説明
コルトレーンのサックスの悲鳴、ヴードゥー教の歓喜と恍惚、土方巽の狂乱―詩人の連想の旅の果てに辿りつくのは「アメリカ」という巨大な空虚と喪失である。鮎川信夫の「アメリカ」から半世紀、戦後詩の最終ランナーとして9.11以後の混沌に問う詩の力、ことばの力。飯島耕一渾身の連作長篇詩集。
目次
二〇〇二年夏東京
コルトレーンの九月
夏の雷
二つのスタイルの二つの詩
バド・パウエルに捧げる二つの詩
ヴィフレド・ラムに歓喜する二つの詩
二つの心臓の大きな川
闘牛―二という数への勝利
東銀座のフォト・サロンで
地下鉄有楽町線に乗って
一月の寒気の中で
荻生徂徠走る
アメリカ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MM
3
なかたつ様のレビューのとおり、固有名詞を知っている人でないと充分に魅力をわかれないのかもしれないと思いながらページをめくった2014/04/26
ポカホンタス
3
訃報に触れて、未読のまま所持していた本書を読んでみた。俳諧的シュールレアリズム。自由闊達さが心地よい。ソニー・ロリンズやバド・パウエルが歌われるのでYouTubeで聴きながら読むと、詩が生き生きしてくるから不思議。自制心と冒険心とのよいバランス。老年でも若さを保つことの大切さを思った。2013/10/29
なかたつ
1
飯島の既刊本の中では、最新の詩集。飯島の詩を読むには、時に読み手の知識を問われることがある。この詩集もその例外ではない。何故、そのように言えるのか。それは、固有名詞の多用から言える。この詩集においてもヘミングウェイやエズラパウンドと言った著名人に加え、バド・パウエル、ヴィフレド・ラムと言った名が出てくる。しかし、その固有名詞に読み手はどこまで付き合うべきなのか。飯島は詩の中で、その固有名詞との関係性を綴る。それはまるで、居酒屋で飯島の話を聞かされるようなものだ。それでも、付き合っていきたいと思う。2013/07/15
龍國竣/リュウゴク
0
現実を題材とする詩人の作品には、自身の病気と年齢の為か、死の影が付き纏う。西脇順三郎への挨拶、土方巽の記憶、吉岡実の墓、多田智満子の死。あとがきさえ種村季弘の死と結び付いている。そんな彼が綴る9.11を契機としたアメリカという国の「死」には説得力がある。2014/03/22