内容説明
より禁欲的に、それゆえになお官能的に、一篇一篇が結晶のような純度の高さで完成された35篇。散文詩でスタートした詩人が自らの形式を得て、確実な展開を見せる言葉の協奏曲。
目次
翔
蕩
憬
仄
腔
揚
踪
路
接
薫〔ほか〕
感想・レビュー
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Cell 44
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「粉雪のような花びらが舞うとき/ゆるやかに交差する/風の寛容を訪う/握りしめた花片のくずれは/すでに朽ちたものの片肺/倦怠の底に仮寓し/いたずらに膨らんで/いつも零度の性器をかたどる/(…)/もしも骨のやさしい感受があるのなら/しろくあたたかい内乱に耽溺し/摩擦音だけをかたかたと/かたかたとひびかせ/喩の恍惚へと/もたれる」(「恍」)同じような熟語の反復(それは「にわかにざわめく胸元の汗のごとく/ありふれた球体のそれらの差異のごとく」(「季」)の同質性か)から紡がれる冷たい官能の感触。ただ、私はあまり……2021/02/14