内容説明
はじめに、フライパンがあった。それも土の上に、伏せてあった―「幽明」とは、暗いところと明るいところ、つまりあの世とこの世。詩人はフライパンにシンボライズさせながらこう規定する。「外といおうか、上の方には光と昼/内側といおうか、その下には夜と闇」。これだけではまだ読者は「中はたかだかフライパン一個の内側/光と昼が圧倒的に優勢―と思うだろう」。が、「しかしなかなか、そうではない」のだと詩人は問題提起する。
目次
闇の神話
詩と運命
アルティザナ
カッコウを越えて
ソネット
箴言と註
三人の男
Q&A
湯溜りの時
ピクニック〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
四不人
1
子供の頃『光車よ、まわれ!』がすごく好きだった。詩人なのは知ってたが、詩集を読むのは初めて。詩自体に詳しくないのでアレだが、韻文と言うよりは散文のような作品も多い。上手く表現できないが、言葉使いがとても好き。「松野屋奇譚」と「ケム出しママのバラード」が特に印象に残ったなあ。他の詩集も読もうかな。2020/03/29
渡邊利道
0
タイトルの通り、行分けの歌もの詩が主体になっていて、現実と幻想のあわいを叙事する詩集。おそらくは著者のごく親しい空間の向こうに幻想をぐなげていく歌で、リズミカルな行分けが軽く閾をまたがせる。二十世紀最後の詩集。2017/02/05
misui
0
「まあ夢だ、しかし 夢ならむしろ本物だし/夢でなければ何でもありはしない」。散文詩と行分けの詩の比率が逆転し、ユーモアもなんだか気を張らなくなったというか全体の印象がゆるゆるになった。こうなるともう一歩引いて楽しむというよりは一緒に巻きこまれる感じになってくるな。今回も「出先から家に帰れなくて呆然とする」という詩業や人生を象徴するようなモチーフはあって、それを詩集の最後に持ってくるあたり、やはり詩人も遠くに来てしまったことに呆然としているようで。2010/05/19
8r5
0
まあ夢だ、しかし 夢ならむしろ本物だし/夢でなければ何でもありはしない(コースト・ドッグ)2024/04/07