内容説明
懐かしさと新しさと。書くことへの畏れをくぐり、確かな筆致で紡がれる無二の作品世界。中原中也賞受賞『びるま』など、既刊詩集全篇を収める清新な集成版。
目次
詩集“びるま”全篇
詩集“唐子木”全篇
詩集“風土記”全篇
詩集“虚仮の一念”全篇
散文
作品論・詩人論
著者等紹介
日和聡子[ヒワサトコ]
1974年、島根県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。詩集に『びるま』(私家版・2001年、第7回中原中也賞。のち青土社・2002年)、小説に『螺法四千年記』(幻戯書房・2012年、第34回野間文芸新人賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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misui
7
古風で特殊な言語感覚の中にユーモアや幻想や恋が通う。言葉の省略の仕方が絶妙で、阿と言えば吽と答えるようななんらかの了解のもとに詩行が積み重ねられている感があって、その独特の空間に遊ぶことができる。ここまで言葉を切り詰めているのにばらばらにならないのは明確な物語が詩の中にあるからだろうし、徐々に小説に接近もしていく(実際、小説も書いているとのこと)。書法が特殊ゆえに軽くしらけを感じるところもあったものの、基本的には軽やかで深刻すぎない詩。とても好きな詩人です。2014/07/30
貴羽るき
1
昔話のような、説話のような詩たち。「君/骨壺はね/やはり半透明のものに限るね」(「百葉」)の3行でガーンとやられた。2018/07/22
May
1
全編にわたって、おかしいような悲しいような、いや感情的な動きではないような周期のとても長い振動があった。自分の好きなものをなぞりつつ更新されてしまった。2016/11/22
林克也
0
とても悲しい詩たち。どの詩も、うまく言い表すことができない重く仄暗い悲しみによって守られ、他者を寄せつけない感じがする。そして、詩によって人心を乱し、乱れて戸惑う人々をじっと物陰から見ている作者の眼がある。まいったな、この人。 2016/10/15
MIU
0
この詩集は慣れないと、と言うか、慣れなければワケ分からない詩の群れ。とくに「びるま」には、投石大臣なんていうタイトルの詩がある。めげずに進めば「野辺」「狭室」「散球」…と続けざまに傑作に行き当たる。ああ、という暗喩に出会う。なんで親の仇のように現代詩を拒絶 する荒川洋治が解説を書いて好意を示しているかが理解できる。それと、たぶんこの人は平田俊子の初期の詩篇にかなり影響を受けていると思う。暗喩の跳躍力は平田俊子より幅を持っているけど、そりゃ後発の威力で当然です。2021/12/13