感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぞしま
8
天野忠の詩はなんであんなにからっとして、あっけらかんとしているのだろう。誰にも侵犯されない領域を保つこと、詩からそんな気概を感じる。2022/03/08
misui
5
老いの達観というか、人生の変転を終えて縁側で庭を眺めているような詩を書く。たぶんこの集に収められていないごく若い時分の作品もあるのだろうけど、そういったものはもう振り返らず、あとは死を迎えるばかりの凪の場所から世俗が眺められる。そこからはどんな小さなものでも美しく輝いて見える。なんら大袈裟ではない詩がただただ心にしみる。「高いところから見ると/ゴミをいっぱい載せた車が走っていた。/ゴミの山から/ゴミがあふれおちて/花びらのように/あるものは陽に光った。」(「菊日和」)2015/05/06
遠い日
2
詩のアンソロジー、『おめでとう』(小池昌代編)で知った天野忠さん。生活があるなぁ、苦悩があるなぁ、ユーモアというか諧謔が利いているなぁ……いろいろ感じながら読んだ。人生というものが、熾烈でもあり豊穣でもあり、そして生きることはやっぱり尊いと思える。そう感じられるものを読めてよかった、と思った。2013/09/25
Cell 44
0
「人間の生は、人間自身にころげ落ちてくる石のようなものだから、つまりはシジフォスのようなもので、天野さんは笑うシジフォスとでも言えようか」(吉野弘「一読者の所感」)貧しい生活を送っているときなど、天野忠の詩を読んでいるとほんとうに泣いてしまうんですよね。2020/10/28