感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
9
無いことによって存在を示す神への接近、それがこの詩人の詩であるらしい。世界は沈黙のうちに閉じており、それらに近づき共に生まれるために、切実な言葉が必要とされる。言葉で己を問うことが世界と神に近づく道となるのだと。無いものに手を伸ばすこの運動が常に自身へと向かっているからこそ、独楽のような運動の論理が詩に要請される。論理が前に出るのは好き好きだが(神などはともかく)希求の切実さには惹かれた。「手を入れると 突然/手は手首から離れて/ゆらゆらと泳ぎ出した/まだあがらない君の屍体の方に向かって」(「手」)2014/08/03
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3
「だがいまは すべてよし/「すべてよし」と言い/「無益な生よ」とは言わぬ/すべてよし/すべてよし/すべてよし/あくまでも憤怒と共に/すべてよし 繰り返し/そしてわたしは凶器に変わる!」(「石くれ」)2020/06/01
水紗枝荒葉
1
信仰の人である。宗教的説話に還元されかねない奥行きの無さ、詩的想像力の乏しさを欠点として認めつつ、彼にしか表現しえないストイシズムの世界が確かにある。「手は たどれ/逆の道/つかんだものを/ひとつずつ/はなし はなして/その手には/何物も 残さぬ道を」(「手は」)2023/05/17




