感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
有沢翔治@文芸同人誌配布中
4
安西均は国文学、特に古事記などの古典を題材に詩を書いた。その関心は詩論で枕詞と「間」との関係を論じていることからも伺えるだろう。また鎌倉などを古都を題材にしながら詩を詠んでいる。さらには都市生活者の孤独、戦争中の経験を詠んだ詩などもあり、題材が幅広い。https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51530861.html2023/08/30
misui
3
基本的には近代からの詩の伝統を感じさせる筆致ながら、平安の時代への憧憬をもとに多く書かれている。それは詩人の故郷・筑紫にゆかりの菅原道真をはじめとする文人たちへのシンパシーと永遠への郷愁であり、また「色男」を気取る態度の陰にも平安の世がちらつく。そしてこの人はなんというか単純に詩が巧い。書かれるものは総じてシャープな輪郭を持ち、その輪郭の鋭さゆえに余情が際立つ。「語ることによって腐爛していく純粋な時間、正確な屍骸を私は愛する。」(「屠殺記」) 2014/05/12
Cell 44
2
「詩論」の方に入っている「古式の笑劇 古事記歌謡の現代語訳、および枕詞小考」が一番印象に残ったかもしれない。八千矛神や奴奈川姫の歌をユーモラスに訳しつつ、「笑い」や「間」といった現代でも重要な要素を検証している。詩では古典に題材をとった詩がやはり印象的だが、「葡萄酒の害について」や「夜の驟雨」周辺も好みである。単なる擬古典ではなく、うぶすなを愛する優しい一人の男が作った詩なのだと感じる。2014/10/22
novutama
1
かなしみの夜の とある街角をほのかに染めて/ 花屋には花がいつぱい 賑やかな言葉のやうに/いいことだ 憂ひつつ花をもとめるのは/その花を頬ゑみつつ人にあたへるのはなほいい/けれどそれにもまして あたふべき花を探さず/多くの心を捨てて花をみてゐるのは最もよい/花屋では私の言葉もとりどりだ 賑やかな花のやうに/夜の街角を曲がると再び私の心はひとつだ/かなしみのなかで何でも見える心だけが。/「花の店」2016/04/02
sk
0
優しいまなざし。2013/03/15