感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
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生まれて、どこかにいなければならない。一定の空間を占めなければならない。住むのでなくても、居ることはやめられない。生きている限りまとわりついてくる。存在するものの生々しさが、不意にこみ上げてくる時がある。川田絢音の詩はその瞬間を書きつけている。「ただどこかに居ようとしてシンガラジャに居た/影のように/まだせき止められずに路上を流されていく/道はしずかに横たわり/どこにも到達しないことをさとって土色をしている」(路上より)2020/12/25
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「カヌーを漕いで/もう一つの部落へ/近づいていく/掌を浸すとひきずりこまれそうな熱い水/みずうみの底から温泉がわきでている/みずうみは青い夕靄に包まれて/鳥の影もない/魂は/覆されない/旅は脈搏のなかで砕けちってしまうのに/じぶんの外へ/流れ出してでも行けるかと/移っていく時間/思い余った言葉を発するように/カヌーを漕いで/みずうみを/渡っていく」(「移っている時間」)2015/09/04