不安の書

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 649p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784783511960
  • NDC分類 969.4
  • Cコード C0098

内容説明

終生、リスボンの貿易会社の仕事にたずさわりながら、もっとも先鋭的な作品をのこしたフェルナンド・ペソアは、生前ごく少数の理解者を得たにとどまり、1935年、ほとんど無名のまま47歳の生涯を終えた。没後、膨大な遺稿が徐々に刊行されるに及んで、その現代性が高く評価され、ペソアは20世紀前半の代表的な詩人のひとりと目されるようになった。1982年に刊行された『不安の書』は、ヨーロッパの各国語に翻訳され、今なお多くの読者を魅了してやまない。存在の不安、自己のアイデンティティの危うさ、生の倦怠、夢と現実の対立と交錯が、リスボン在住の帳簿係補佐の手記という形式を借りて語られた。現代世界文学の傑作とされる。本書は、1986年刊行の全集版を底本に、1999年にサンパウロで刊行されたゼニス版をも参照した完訳である。

目次

第1部 ベルナルド・ソアレスの序論(断章)
第2部 告白(生前ペソアにより刊行されたか、あるいはそのために準備されたテクスト;予め準備されたものではないが年代順に配置されたテクスト;日付のないテクスト)
第3部 題名のある文学的なテクスト(生前に詩人の発表したもの;年代順のもの;日付のないもの)

著者等紹介

高橋都彦[タカハシクニヒコ]
1943年東京生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。拓殖大学教授。ポルトガル語学・ポルトガル語文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

燃えつきた棒

42
「EUフィルムデーズ 2022」のオンライン上映で、ジョアン・ボテーリョ監督の映画「リカルド・レイスの死の年」を観て、サラマーゴの原作本ではなく、ペソアの方へ来てしまった。 ペソアは、終生、リスボンの貿易会社の仕事に携わったというが、本書は、リスボン在住の帳簿係補佐ベルナルド・ソアレスの手記として綴られている。 どうしても、保険局に勤めながら作品を執筆したカフカのことを思い出してしまう。 同時に、「ブル・シット・ジョブ」という言葉も脳裏に浮かぶ。→ 2022/09/27

テツ

30
自分という存在。人生を通して必死に築き上げてきたアイデンティティ。そうしたものは実は瞬きをした瞬間に崩れ去ってしまうほど不確かなものなんだぜということを頭と心に叩き込んでくれる散文詩。脳内で思考を積み重ねそこに浸っているときの恍惚感は現実に目覚めたときに嘘のように消え失せてしまう。きっと誰もが一度は感じたことがある、自分という存在の脆さ、その自分を取り巻く世界の脆さに気づいたときの落下していくような凄まじい不安。読後は悪い酔い方をしたときのような感覚に陥る。2018/11/21

長谷川透

23
「わたし」という一つの人格が姿を現す時というのは、目醒めのようなものなのか? そして、「わたし」の人格から他の人格へと切り替わる時、それは眠りに落ちるようなものなのか? 「わたし」という人格が肉体の中で眠るとき、「わたし」は夢を見るのだろうか? 目醒め、眠り落つ前、夢に共通するのは現実と「わたし」という存在の捉え所の無さ、意識がはっきりしている時でさえも抱く倦怠感。多重人格者にとって「わたし」は存在しているとも存在しないとも言えない。彼は唯どこからか聞こえてくる曖昧な声音のシンフォニーを聴くだけだ。2013/01/10

抹茶モナカ

15
ペソアの異名ソアレスの筆致という設定の散文集。美しい文章で、倦怠、眠り、夢といったイメージを日常に重ねて行く。不安についての直接的記述はないけれど、難解な本であり、軽い気持ちでぶつかると、精神力を削られる。読み応えはあったのだけど、自分の理解力に不安があって、手元に置いて、暇な時に開いたページの文章を読み返したいような。2014/08/08

圓子

6
読終えるのに何年かかったことか!?時折意味を見失うのに、ぐいぐいと沁みてゆくこれはなにか。こんな文章を書き散らして生きてゆきたい。2016/03/14

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/25747
  • ご注意事項

最近チェックした商品