内容説明
本書におさめられた二つのエセーで、著者カッシーラーは、誤解のベールにおおわれていたヨーロッパ18世紀の啓蒙主義に光を当てる。すなわち最初の「カントとルソー」においては、きわめて異質な2人の人物の関連を明らかにすることによって、啓蒙主義の国際的な広がりを描き出し、第2の「ゲーテとカント哲学」では、啓蒙主義の他の方向への広がりを探求している。同時代に生きる人間の類似点と相異点を明らかにすることにより、1つの時代の持つ相貌=時代精神を明らかにするこの作業は、カント・ゲーテ・ルソー理解を深めるだけでなく、現代思想の源流を解明するのに欠かせないものである。
目次
カントとルソー(個人的影響;ルソーと人間の本性の原理;法と国家;楽観論の問題;「単なる理性の限界内での宗教」;結論)
ゲーテとカント哲学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
時間に正確なカントの生活を唯一乱したのは、ルソー『エミール』を耽読した時だけだという。子どもを大人と異なる存在とし、独自の教育論を小説ジャンルを駆使して展開したルソーに、カントは子どもを大人への過程と見る従来の教育に潜む倫理学のフィルタを外し、感情という不確定な領域を刷新する契機を見出した。本書はここに一見対極とされる両者の共通性を見る。対極にある者の中の共通性を見る著者の方法は、自然観におけるニュートン科学的カントと形態論的ゲーテにも援用され、両者に目的と有用性を混同する形而上学的独断への批判を見出す。2019/05/04